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2025年1月30日
国際歴史論戦研究所 所長 山本優美子

 1月29日、日本政府は国連女子差別撤廃委員会が男系男子を女子差別として皇室典範改正を勧告したことに対して抗議の意を示し、高等弁務官事務所への任意拠出金の用途から女性差別撤廃委員会を除外すること、本年度に予定していた委員の訪日プログラムの実施を見合わせることを発表した。日本の国柄と伝統を無視した勧告を発し、日本政府が削除を求めたにも関わらず応じなかった女子差別撤廃委員会(以下、委員会)に対する日本政府の今回の措置は真っ当であり、当研究所は大いに支持するものである。

  2024年10月に国連ジュネーブで行われた女子差別撤廃員会の対日審査において、委員が「皇室典範の改正」について質問した際、常に弱腰に見える日本政府代表団が珍しく毅然と「皇室典範に定める我が国の皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項であり、委員会がり上げることは適当ではない」と回答した。その直後、本来なら意見を言うべきでないはずの議長が「日本だけでなくすべての差別的な法律がある国に対しては同様の質問をしている、委員会として適切な質問だ」とまるで説教するように発言した。

 後に発表された皇室典範改正勧告と削除に応じない委員会の姿勢は、この時の議場の雰囲気からある程度予想できた。委員会が審査対象国の固有の文化や伝統を配慮しないで勧告を発するのは以前からあった。

 そもそも、国家の基本に対する内政干渉は国連機関といえども許されないことであり、国連憲章第2条第7項の「いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国連に与えるものではない」との、内政不干渉原則に反することである。ローマ法王やチベットのダライ・ラマ法王も男性であるなど、伝統や戒律により男性のみが就く地位は世界には多数あり、日本の男系男子皇統のみを殊更に男女差別と非難するのは不当かつ不公正な対日差別であり承服できるものではない。

 日本政府はこれからも文書による抗議だけでなく、毅然とした且つ具体的な措置を講じて日本の意見を国連で主張していくべきである。今回のような措置を実行してこそ、委員会以外の国連機関に日本政府の意見をアピールできる。この姿勢を後退させることなく、今後も堂々と貫いて頂きたい。

 男系男子を支持する当研究所は、皇室典範問題が委員会で扱われる問題になると事前に予想し、委員会に宛てて百地章先生(日本大学名誉教授・法学博士)と竹内久美子先生(動物行動学研究者)の論文を纏めた意見書を送っていた。また、当研究所と協力関係にある「皇統を守る国民連合の会」(葛城奈海会長)も対委員会活動として意見書を送り、現地でも発言とロビー活動に取り組んだ。もし、こうした民間による努力が政府の今回の決定を後押しできたのであれば大変に嬉しいことである。

以上

【英語版】https://i-rich.org/?p=2264

国際歴史論戦研究所 上席研究員
河原昌一郎

1 トランプ政権と中台関係

米国でトランプ氏が大統領に就任し、トランプ第二期政権がスタートした。トランプ政権の布陣を対中台関係でみれば、国務長官にマルコ・ルビオ氏、安全保障担当大統領補佐官にマイク・ウォルツ氏を配する等、主要閣僚は対中強硬派で固めてある。台湾では、国務長官にはポンペオ氏の再登板を期待する声が大きかったが、台湾にとってまず申し分のない布陣としてよいだろう。

トランプ第二期政権の対中台政策は、付加関税で中国に厳しい態度で臨んだ第一期政権のものを基本的に踏襲したものとなろう。トランプ氏は、石破首相と会う前に安倍元首相夫人を自宅に招き、会談したが、このことの意味は深長である。一つ言えることは、今後の対中国を含めた外交路線については安倍路線を尊重すると言うことである。台湾重視の安倍路線は中共の嫌うところであり、大きな反発があったことは記憶に新しい。

トランプ氏の外交政策の大きな特徴は、国際組織をあまり信用せず、米国単独で問題解決に向けて行動に出ることが多いことである。確かにそのほうが破壊力があり、効果が大きいことがある。第一期政権ではオバマ氏が推進したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に結局参加せず、米国通商法を適用して対中国単独制裁の方法をとった。これに対して中国は為す術を知らなかった。こうしたことから、バイデン政権が推進し、米国もその加盟国となっているIPEF(インド太平洋経済枠組)についても脱退するのではないかとの推測もある。

一方、中台関係は、現在、緊張がますます増している。中共は賴清徳氏を台湾独立派と見なし、台湾包囲の軍事演習を強化している。2024年10月の双十節の台湾総統挨拶では実質的に台湾を独立国とする発言が不穏当だとして過去最大規模の台湾包囲演習を実施した。バーンズCIA長官は、2023年2月、習近平主席が2027年までに台湾侵攻準備を完了するよう軍に指示したと発言している。もしそうだとすれば、2027年前後が中共による台湾侵攻の可能性の最も高い時期ということとなろう。

2 中共の台湾統合シナリオ

 現在の中台関係の主要な規定要因である中共の台湾統合シナリオには平和的統合シナリオと軍事的統合シナリオとがあるが、これら両シナリオは、単独で実施されているわけではなく、相互補完的に、そのときどきの情勢に応じつつ進められている。

平和的統合シナリオは2005年の国共トップ会談(連戦国民党主席と胡錦涛共産党総書記との会談)で合意された「五項目の共通認識」(五大願望)に基本的に表明されている。

この五大願望は、まず台湾を経済的に取り込んで台湾の中国への依存度を高め、その後平和協定を締結して台湾統合を完成させるというものであり、中共の台湾統合シナリオを書き下ろしたものとなっている。2008年に国民党政権を回復した馬英九氏はこの五大願望を忠実に実行した。そして2011年には五大願望の仕上げとも言うべき両岸平和協定の締結を持ち出したが台湾人の極めて強い反発に会い、このときは速やかに撤回せざるを得なかった。

その後、2016年に民進党の蔡英文政権が成立し、両岸平和協定は両岸の議題とすることができないよう法改正でもって厳しく封印された。続く2024年には同じく民進党の賴清徳氏が政権を獲得し、蔡英文政権の立場を引き継いでいる。

こうした中で、注目されるようになっているのが軍事的統合シナリオである。中共は、台湾への軍事侵攻を視野に入れつつ、軍事力強化を急速に進めている。中共の軍事演習は実施の度に規模が拡大され、また台湾をより包囲する形となり、台湾人への威嚇を強め、恐怖をあおるものとなっている。

3 トランプ氏と戦略的曖昧性

 2024年10月にトランプ氏はWSJ(電子版)のインタビューで、中国が台湾を封鎖した場合の対応を問われ「台湾に立ち入れば、150~200%の関税を課す」と述べた。ただちに軍事的に対応するのではなく、関税付加で対抗するということであるが、これで中国経済は壊滅するだろうから有効な抑止力となろう。また、台湾封鎖に対抗するために軍事力を行使するかという直接的な問いに対しては「行使する必要はないだろう」と答えている。その理由として、「習氏は私を尊敬しており、私が常軌を逸していることを知っている」からだとする。これはもし米国が武力を行使することとなれば通常にない強力なものになるという意味だろう。台湾への武力行使に軍事力を用いるかという問いにただちに「用いる」と返事をしていたバイデン氏とは異なる対応となっている。トランプ氏は台湾有事には戦略的曖昧性を残しておいたほうがいいと考えているのである。

4 台湾の国家承認と安全保障

 トランプ第二期政権においても、第一期政権時と同様、台湾重視政策は変わらず、武器売却等は積極的に行われるだろうが、第二期政権において直面する可能性のある重要な問題が一つある。ポンペオ元国務長官の主唱する台湾国家承認の問題である。

2022年3月7日、台湾を訪問中のポンペオ氏は、「米国は必要かつ、とっくに実行しておくべきだったことを直ちに行う必要がある。台湾を自由な主権国家として承認することだ」と述べた。また、台湾の国家承認こそが台湾にとっての最大の安全保障だとも述べている。

 そして、その後も台湾の国家承認を米当局者に呼びかける等の発言を積極的に続けている。2024年9月17日のハドソン研究所での会合では、「他の米政府当局者も私に賛同してくれることを願っている。それで議論を引き起こせると思うからだ。中国共産党は威嚇し、脅すだろうが、(台湾独立を)明確に訴えれば、世界に対して、台湾が独立国家であるという根本的な事実、根本的な現実を認める呼びかけとなる」と述べた。

 中共は台湾の国家性は認めていない。中共によれば台湾への武力行使は中国という一国家内の問題に過ぎない。すなわち、台湾への武力行使は内政問題であり、内政問題には他国は干渉できないはずだと主張する。

 ところで、台湾海峡の現実を見るとき、誰もが台湾が中国に含まれているという中共の主張が全くの詭弁であることを感じざるを得ないだろう。国際法上もモンテビデオ条約での国家の要件は、「永続的住民」、「明確な領域」、「政府」、「他国との関係を取り結ぶ能力」の4点であるが、台湾はこれらの要件を問題なく満たしている。そして、この30年来の独立した民主国家としての台湾の安定的で継続した活動を知らない者はいない。台湾海峡の両岸には紛れもなく2国が存在している。したがって、中共の台湾への武力行使は、明白に国連憲章第2条第4項で禁ずる他国への侵略行為に該当する。

 ところが、現在、台湾は国連の加盟を認められず、国連の組織の構成員にもなれないこと等から、2300万台湾人の権利がいろいろな面で損ねられている。

 ただし、現実に台湾を国家承認する場合は、当該国は中共から報復措置として中国との断交を覚悟しなければならない。そうした外交的リスクを冒してまで台湾を国家承認する国はないのが現実である。外交的リスクをとれる国があるとすれば唯一米国であるが、現在の困難な世界情勢は米国にもそれを許さないだろう。米国が台湾の国家承認に踏み切るときは世界情勢が変化し、中台関係が極度に緊張するか、武力行使が現実のものになるときである。そのときは、米国は、自国の武力介入が国際法上の正当性を確保し、各国の賛同を得る観点からも台湾の国家承認を行うことが求められよう。

 中台関係の危機的事態がトランプ第二期政権期に起こるかどうかはともかく、台湾の国家承認は世界情勢を左右する重大問題であり、今後、米国は台湾問題に関係して、これについての検討を深めていくこととなろう。ただし、台湾海峡の現実に明らかに矛盾し、台湾人の権利を損ねている中国の詭弁をこれ以上放置することも望ましいことではない。ポンペオ氏やその賛同者たちの活動に期待するとともに、台湾の早期の国家承認をめざして、我が国でもこの問題についての認識を広げていかなければならない。(了)

本メールは一般社団法人 国際歴史論戦研究所(iRICH)にご支援下さった方々、ご理解いただいている方々に送信しております。

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一般社団法人 国際歴史論戦研究所 隔月刊活動報告vol.1
*** Topic ***
○第89会期国連女子差別撤廃委員会に参加
○皇室典範改正の勧告への抗議声明
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いつも当研究所の活動にご理解とご協力いただき有り難うございます。

報道にもありますように、10月にジュネーブ国連にて女子差別撤廃委員会の対日審査会が行われ、皇室典範改正、選択的夫婦別姓などが日本政府に勧告されました。

当研究所は、対国連活動の一環としてこの女子差別撤廃委員会にも取り組み、現地でも活動してまいりました。11月24日付けの産経新聞 「サンデー正論 国連で戦っている民間人」で当研究所の所員の活動が紹介されております。

https://www.sankei.com/article/20241124-7JARK6GW4BL2JDQSDLZIDBZ2H4

また、協力関係にある「皇統を守る国民連合の会」、「特定失踪者問題家族会」の対委員会活動もサポートさせていただきました。

皇室典範改正の勧告に対しては、当研究所は11月18日付けで女子差別撤廃委員会の委員長と委員宛に抗議声明を送りました。

抗議文では、長い伝統と歴史によって継承、形成された皇室は「性差別」とは全く関係ないものであり、干渉すべき問題ではないこと。それを変えるように勧告することは、国連の全ての条約体委員会の信用と信頼を大きく損なうことになること。よって、皇室典範に関係する勧告を総括所見から直ちに削除することを強く要請しました。

日本語 https://i-rich.org/?p=2163

英語  https://en.i-rich.org/archives/525

この抗議声明を送るにあたって、一般向けにも声明文を発表しましたのでご紹介します。メディアの報道だけでは分からない情報もありますので是非ご一読ください。

現在ユネスコの「世界の記憶」”Memory of the World(MoW)”では、慰安婦は性奴隷であるという申請とそうではないという申請との間で、登録に向けての双方の対話が求められています。また「世界文化遺産」に登録された「佐渡島の金山」においては、強制労働があったという側からの圧力が今後も予想されます。この度、こういったユネスコにおける歴史問題の最新情報を発表し、識者の方々から提言をいただく研究会を開催することとなりました。私共の対ユネスコ活動へのご理解とご協力をいただくきたく、皆様のご参加をお待ち申し上げております。

ユネスコ「世界の記憶」を考える国民の会 代表 小山和伸

【日時】2025年1月31日(金)受付開始14:30 開会15:00 閉会17:00
【場所】参議院議員会館 B103会議室(定員54人)東京都千代田区永田町2-1-1
アクセス 地下鉄 有楽町線・半蔵門線・南北線「永田町駅」1番出口よりすぐ
     地下鉄 丸ノ内線・千代田線「国会議事堂前駅」1番出口より徒歩5分

Japanese https://i-rich.org/?p=2200

Sugihara Seishiro
President, International Research Institute of Controversial Histories

On September 18, 2024, in Shenzhen, China, a boy pupil of a local Japanese school and his mother were attacked by a 44-years-old Chinese man and the boy was stabbed to death.

The incident was supposedly caused by the patriotic education implemented by Jiang Zemin, who became general secretary of the Chinese Communist Party in 1989, aiming to promote hostility against a particular state. Thus, the tragic incident occurred as the result of anti-Japan education. The anti-Japan education was introduced as means of oppressing the democratization movement like the Tiananmen incident and maintaining the rule of the Chinese Communist Party within China.

At the present time, the rational way for a state to operate is by being a democratic state where those who hold the political power are regularly replaced by the will of the people and the national will is largely formed according to the wishes of the people who constitute the state. In ancient states, the election itself was impossible. Since the election is possible today, it is a right concept in view of the evolution of the law that the will of the state should reflect the choice of the people through election.

Today, however, a type of tyrannical state exists where a certain political body like the communist party or an individual takes hold of the political power and such a group or an individual determines the will of the state. When comparing the advantages and disadvantages of the two political systems, in terms of the deterrent of war, it becomes clear that the democratic state is superior.

In Japan’s history, the Japanese people have been belligerent in certain periods. Now, after having gone through the tragic experiences in World War II and when its battle scenes are conveyed at hand on television and through social media, the people cannot be belligerent in principle. That is because we realize that if a war begins, the people constituting the state will be forced to risk their lives on the battleground. If people feel the danger, naturally, a trend to avoid war emerges among them, which affects the will of the state, leading to deterrence against war.

On the other hand, in a despotic state, the group or individual holding the power never faces the danger of death when a war is started as the will of the state. Consequently, the sense of the necessity to avoid war becomes weaker. Moreover, to maintain its despotic rule, which is not consigned by the people, the ruler may think it necessary to keep the people under stress and possibly resort to waging a war as a means of doing so. Therefore, a despotic state has weaker deterrence against war.

Applying this argument to the antagonistic education against a particular state, it goes without saying that such hostile education against a specific state itself is far from agreeable when it comes to global peace in the 21st century. In a despotic state, the power holding group or individual must establish a policy merely to maintain the despotic rule within the state and exercise the political power for that sake. The ruler may say that it is for the benefit of the state, but, in fact, it is merely for the sake of maintaining the despotic system and for the sake of the ruling group or the individual’s benefit.

Depriving people from their freedoms in a despotic state is an inevitable consequence of the need to maintain the despotic regime and, as a result, the people are oppressed.

While the Chinese people today violently hate Japan, totally affected by the anti-Japan education, at the same time they are robbed of their freedom by the power holding group or the individual and feel desperate under the harsh oppression.

Now, I would like to make a suggestion to the Chinese-origin people all over the world. Presently, there are many people of Chinese background in the United States, Australia and elsewhere who have obtained the nationality in the respective countries and live free from the rule of the Chinese Government. To our surprise, those Chinese-origin people sometimes agitate to promote anti-Japan education in cooperation with the Chinese Government’s overseas propaganda activities or work for the Chinese Government’s “wolf-warrior diplomacy.”

Now, it is time to stop and think. Is it tantamount to leaving the Chinese people in mainland China suffer, unilaterally deprived of their freedom and helping the tyranny go on or even become harsher? If you cooperate with the Chinese Government in this way, that will strip the freedom of the Chinese people in mainland China even further and cause them to suffer in a worse way.

If Chinese-origin people in the world with nationalities other than mainland China criticize the way the Chinese Government is now and resist it, the action will lead to helping the fellow Chinese people and contribute to world peace. I truly want to appeal to the Chinese people with foreign nationalities to take a considerate and brave action.

評者 一二三朋子

本書は、日本人が取りつかれている国連信仰・国連幻想から目を覚まさせる絶好の書である。著者の藤木氏は、「国連や国連機関がいかに無駄で無能な機関であるか、日本にとって有害であるか」を喝破し、国連のていたらくを「国内外に訴えて続けてきた」のである。

 著者の略歴について紹介する。著者は1964年生まれ、自動車用品の大手チェーンに入社後、24歳で電機メーカーを起業し、音響機器、自動車関連部品、電気機械などの製造と貿易に従事する。海外との接触・交渉を通して、日本がいかに海外から高く評価され、信頼を得ているかを知り、日本の素晴らしさを肌身で感じた。そうした体験を踏まえて、日本のすばらしさを守り、それを伝えるために保守活動を始める。2010年、テキサス親父日本事務局を創立し、テキサス親父ことトニー・マラーノ氏のメッセージを日本国内に発信する活動を開始する。テキサス親父とは、シーシェパード(米国の反捕鯨団体)に抗議したり、国連に乗り込んでいって、日本の名誉を毀損する中国・韓国・米国などに反駁する言論活動をしているアメリカ人である。テキサス親父は、藤木氏にとって、反日左翼団体との死闘を共に戦ってきた無二の盟友とも言える。2014年以降、慰安婦問題、徴用工問題などの反日プロパガンダへのカウンター活動を行うために、年4回、自費でジュネーブにある国連人権理事会に赴いている。そうした活動を通して、国内の反日左翼NGOによる国連での反日活動や、韓国、中国による反日プロパガンダの実態、人権委員会の左翼に極端に偏向した実態を目の当たりにする。こうした反日左翼団体及び国連での体験をまとめたのが本書である。

 本書の構成を概括する。

 第一章では、国連がいかに「左翼の巣窟」であるかを論述する。日本の反日左翼NGOは40年以上にもわたり国連でロビー活動を繰り広げ、国連の委員たちに虚偽の情報を吹き込んで、日本がいかに人権侵害を行っているひどい国であるかを信じ込ませてきた。その実態を明らかにする。尚、現在では中国が国連人権理事会を牛耳っているという。

第二章では、藤木氏の国連での戦いが描述される。2014年、国連に初めて飛び込んだ藤木氏と反日左翼団体との闘いの一端がうかがえる。と同時に、共に戦う同志を希求しており、そのために必要な資質についても言及する。

第三章では、いまだにくすぶり続けている慰安婦問題の背景を暴露する。慰安婦ビジネスと化し、この問題を終わらせまいとする勢力たちの実態が明らかとなる。

第四章では、中国の人権侵害・民族殲滅の実態を明らかにする。新疆ウイグル自治区、南モンゴル、バローチスタンへと、中国の弾圧・侵略は着々と進行している。にもかかわらず、国連委員たちは中国のプロパガンダを見抜けないままであるという。

第五章では、詐欺映画『主戦場』のからくりを解明する。『主戦場』が研究倫理違反であることは明白である。出演者に虚偽の説明をしてインタビューを承諾させ、そこで録画されたインダビュー動画を一方的に編集することで、保守の言論人を徹底的に貶めているのである。作成した「出崎幹根」とその指導教員である上智大学教授中野晃一が黒幕であると糾弾する。

第六章では、「子供連れ去り」問題が取り上げられる。一般的にはあまり聞き慣れない「子供連れ去り」だが、この裏には国家を破壊させる伏線が張り巡らされていることが明らかにされる。「子供連れ去り」の真の狙いは、選択的夫婦別姓から戸籍法廃止を経て、皇室廃止、即ち国家を破壊させることであるという。これまでにも反日左翼団体は、ありもしない問題を国連に持ち掛け、日本の国体や実情には全くそぐわない法律を成立させてきた。ヘイトスピーチ規制法、DV防止法、さらにはLGBT問題、アイヌ問題、沖縄問題など、反日左翼団体が国家破壊を目論んで国連を動かしてきた構図を暴く。次々繰り出される反日左翼団体の国家破壊計略に対し、藤木氏は国連人権理事会その他の人権関連委員会や会合に出席し発言してきた。まさに藤木氏の警告するところの「蟻の一穴」が開けられないためである。

 藤木氏の活動は、本来なら外務省がすべきことである。一般人が自費で国連に乗り込んで行うべきことではない。国連に一回赴くだけで交通費と滞在費(宿泊費や食費その他)など軽く40万円以上かかる。対する反日NGOは団体数も関わる人数も圧倒的に多く、出資元は不明だが、何故か資金も潤沢にあるようである。いわば多勢に無勢の、時に命の危険を感じることもある攻防の中で藤木氏は闘ってきたのである。

 ところで、藤木氏の活動の原動力とは何なのか。反日左翼団体への怒り、それだけであろうか。そこそこの幸せな安定した生活を追い求める保身ばかりの人間には、到底藤木氏の捨て身の行動は理解できまい。私財を投げうち、家族との平穏な時間を犠牲にし、命の危険と隣り合わせの中で、反日左翼団体の卑劣な言動に果敢に反撃する。

その活動の原動力は、ひたすら国を思う熱き思いであろう。国への思いとは、この素晴らしき日本、世界中から信頼されている日本を築いてくれた先人たちへの感謝と、それを次世代につなぐことで、先人たちの血と汗と涙の労に少しでも報いたい・・・。そのためには、自らの命も惜しくない・・・。それ程の気迫、鬼気迫る熱意を、藤木氏から感じるのである。

本書の題『我、国連とかく戦へり』の「戦り」、そして「あとがき」の「皇紀2680年」の「皇紀」に、日本という3000年もの長きにわたる国の歴史に対する誇りと、日本語に対する矜持を見る。

戦後、GHQたちが恐れた日本人の魂が、藤木氏を通して復活しつつあると感ずる。本書は、その復活を強力に促す本と言えよう。

一般の人間に藤木氏のように闘うことを求めても無理であろう。しかし、こうして国連と戦っている日本人がいることを知り、国連とは左翼の巣窟であることを知るだけでも、精神的武装となるであろう。そしてささやかながらも藤木氏の孤独な闘いへの応援にもなるであろう。ひいては、それが、日本の強さとなる。将来にわたり、武力ではなく、真の日本の強さとなると信じる次第である。

【英語版】

国際歴史論戦研究所 フェロー
エドワーズ博美

最高裁大法廷が昨年10月25日に性同一性障害者の性別変更を巡る手術要件を違憲とする判断を示した。近隣の中学校では最近、道徳の時間に「LGBTとは何か」といった授業が行われたという。LGBT法案が蟻の一穴となってこうした判決が出てくるのは目に見えていた。また、学校現場でなし崩し的にLGBTを肯定的にとらえた教育が横行するようになった暁には、日本の伝統や価値観は壊され日本社会は混乱に陥るだろう。

イギリスのロンドンにキウィタス市民社会研究所(CIVITAS:Institution for the Study of Civil Society)というシンクタンクがある。現在社会における問題点に焦点を当て、適切な事実に基づいた情報を提供することで幅広い議論を活性化させることを目的として運営されている。CIVITASが2020年に「トランスジェンダーイデオロギーの深刻な影響(The Corrosive Impact of Transgender Ideology)」と題する論文を発表している。著者は「女性 対 フェミニズム(Women V Feminism)」等の著書があるジョアンナ・ウィリアムズ氏だ。長年LGBT思想に席巻され、様々な社会問題が起きているイギリス社会の轍を踏まないためにも、氏の論点を参考に、LGBTの中でも特にTに焦点を当てて考察してみたい。

トランスジェンダーとは

ウィリアムズ氏の論点に入る前に、トランスジェンダーとは何かについて簡単にする。トランスジェンダーとはトランスとジェンダーの合成語でトランスとは「越える」「他の側」という意味がある。では、ジェンダーとは一体どういう意味があるのだろうか。手元にある1988年出版のウェブスター辞書にはジェンダーの意味としてセックス(性)とある。もともとジェンダーはセックスと同義の言葉であり、性交の意味で使われるセックスとの混同を避けるために性差をセックスと言わずにジェンダーという言葉が多用されるようになった。

その後、1950年代に心理学者のジョン・マニーが「性別を自己認識する要因は先天性(遺伝子)ではなく、後天性(環境)である」と主張するようになり、彼は生物学的性差であるセックスと区別して行動や態度を示す言葉としてジェンダーを使った最初の人と言われる。マニーの主張を利用して1980年代に大々的に「ジェンダーは社会的・文化的に形成された性」であると主張するようになったのがフェミニストと呼ばれる人達だ。社会的に形成された性差であるから、学習や環境によって性差は解消され男女差別も解消されるというわけだ。同じ頃、男や女に拘らない、二つの性を超越するという意味でトランスジェンダーという言葉が使われるようになった。

しかし、ジョン・マニーの主張は正しかったのだろうか。マニーは8ヶ月の時に割礼手術の失敗で陰茎の殆どを失ったブルース・レイマーの親に、ブルースに性転換手術を施して少女ブレンダとして育てるように勧めた。性に対する認識は環境で培われるので、女の子として育てればブルースは問題なく女の子になれる、との期待があった。しかし、最初は成功したかに見えた事例だが、ブルースは女の子として育てられたにもかかわらず自身のことを「女の子」と自覚することは一度もなく、14歳の時に事実を告げられた。その後、自らディビッドと名乗るようになり、「性転換手術反対」を貫いている。ディビッドは38歳で自殺しているが、自然に逆らい人工的に男性を女性に作り上げようとした犠牲者と言える。

性格形成にしろ、精神疾患にしろ、以前から専門家の間では「先天性 対 後天性」という議論はあった。しかし、結論はこの二つが複雑に絡み合って性格は形成され精神疾患も引き起こされる、と言われるようになっている。性差のみ後天性であるという議論は成り立たないし、セックスとジェンダーを分けて考えることなど不可能だ。それにも関わらず、なぜかジェンダーは後天性であるから変えられるという主張が一人歩きしている。そろそろこうした矛盾に気付く時だ。

トランスジェンダー思想の問題点

前述のウィリアムズ氏はトランスジェンダー思想が引き起こす問題点をいくつか紹介している。その一つが「肯定的アプローチ」と呼ばれるものだ。子供達はいくつもの段階を踏んで成長していくが、自分探しもその一つだ。そうした成長過程において、自分はトランスジェンダーかもしれないと思う子供も少なからずいる。そんな時に大人達がそれを肯定してしまうと、子供の思い込みが固定化され後に変えることが難しくなると氏は懸念する。特にこうした子供達は自身の性に関する悩みが起きる以前にすでに社会的精神的問題を抱えている子供達が多く、10%の子供達は過去に性的悪戯の犠牲になった経験をもち、35%の子供達に中程度以上の自閉症の傾向があるという。トランスジェンダーをむやみに肯定することで、そこに隠された真の問題が見落とされ、時として子供の利益に反する結果になることもあるという。

二つ目が活動家による言葉狩りの問題だ。トランスジェンダー思想が蔓延り「生物学的に男性であっても自分が女性と思えば女性である」という主張を闇雲に受け入れた結果、西欧社会では「女性」の定義さえもできなくなっている。トランスジェンダーに対してシスジェンダー(Cis-gender)という言葉も造られた。認識する性が生物学的性と同じ人のことで、わざわざシスジェンダー(シスは「こちら側」の意)と言う言葉を新しく造ることで、生物学的女性が女性と認識することが生物学的男性が女性と認識することに比べて自然なことでも一般的でもないことを印象付けようとしていると氏は指摘する。大学では学生が自己紹介するときに「私の名前はOOOで、私を呼称するときの代名詞はhe/him(またはshe/her)です」が一般的に行われるようになってきている。これも「シス」同様に、全ての人には性認識があり外見からその人の性を憶測することはできないという考えを一般化するための試みであるという。

さらにトランスジェンダーに批判的なことをいうと「トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)」というレッテルを貼られ、人権侵害者の刻印を押される。教育現場などでは人権侵害者扱いされ村八分にされることを恐れて、教授が自己検閲し自由に発言することも難しくなってきている。こうしてトランスジェンダー活動家と呼ばれる一部の人達によってトランスジェンダーに関する発言が左右されるようになり、言葉狩りが平然と行われている。まるで共産主義社会だ。言語が社会の慣習や現実を無視して、自分達の望むような社会を形成するための武器になっている。トランスジェンダーが社会に与える影響に関して、自由に発言することができなければ、いずれは思想の自由まで侵されるとウィリアムズ氏は懸念する。寛容性の名の下に活動家達はトランスジェンダーを推進するが、彼ら達の手法はあまりにも非寛容的である。

最後に、ウィリアムズ氏は被害者ビジネスの問題点についても指摘している。人々は被害者と認められることで、往々にして認知、支援、保護が得られるものだ。被害者であることは社会的資源を手に入れることであり、一種の社会的地位でもあるという。被害者文化においては、不公平を存続させ多様性を消失させるような行為は道徳的非難の的にされる。活動家たちはトランスジェンダーを被害者として紹介することに大いに成功している。左翼達が被害者を必要としているのは、それが彼らの原動力のようなものであり、それゆえ抑圧され不利な立場の人達を支援する被害者ビジネスに深く関わるという。

しかし、ある一定の被害者の地位を向上させることは社会的結果を伴うのも確かだ。それは道徳的平等性と相容れず、民主主義的文化を弱体化し、法的平等性を損なう。ある一定の人達が他のどんな人達よりも道徳的法的保護に価するということは、一般大衆の言論の自由、集会の自由、思想の自由といった権利を犠牲にしないと成り立たないからだ。性自認が女性というだけで女性トイレや更衣室の使用が許可されれば女性のプライバシーはたまったものではない。差別されてきた被害者であるというだけで特権を与えてしまえば、大多数の女性が被害を蒙る。

同性愛者たちが目指したものは、法律や国から束縛されることなく自身の性行為の自由を得ることだった。しかし、トランスジェンダー運動は違う。前述したように、彼らはトランスジェンダー以外の人達の行動を規制することによって自身の保護を得ようとしている。一昔前までは、急進的と言われる人達は国や組織の権力から自由を獲得することを目的としていた。しかし、現在、彼らは弱者を攻撃から守るという名目で大多数の人達の言論の自由さえも束縛していると氏は指摘する。

トランスジェンダーが増加した理由

イギリスにおける正確なトランスジェンダーの人数は把握できていないが、20年以上前までは40代前半に多かったトランスジェンダーが最近では10代の女の子の間で圧倒的に増えているという。性自認に問題を抱える子供達を治療するタビストック研究所によると、2009/10年に研究所に紹介された女の子は32人、男の子は40人だったのが、2018/19年にはそれぞれ1740人と624人に跳ね上がっている。10年間に54倍と15倍になったことなる。何がこうした増加に繋がったのかについてもウィリアムズ氏は分析している。

一つにはトランスジェンダーの意味が広範になったことが挙げられる。いつの時代にもトランスセクシャル(性同一性障害)と言われる人達は一定数いたが、以前ならお転婆娘や軟弱な男の子ですまされた子供達やトランスベスタイト(女装する男性)と言われる人まで一括りにトランスジェンダーに入れてしまった。二つ目は、活動家たちが同性愛者たちが長い間活動してきたLGB運動にTを付け足して、LGB運動と連動させ彼らの組織と資金源を利用したこと。さらに、活動家達の並優れた組織力を利用して大企業でロビー活動をしたこと。学校の授業、音楽、テレビ、映画などを通してトランスジェンダーを肯定的に取り上げたこと、等を挙げている。

結論

トランスジェンダー思想に長年席巻された欧米では、教育現場でこうした思想が蔓延し、子供達に感情に忠実になって自らの性は選べると教えている。そして、子供たちが自ら選んだ性自認に従って、親には内緒で子供達の名前や呼称する代名詞(He/She)を変えている学校もあるという。時として、子供達の気持ちや感情に寄り添うことは必要であるが、子供達の感情を最優先させることで子供達は安易に感情に操られるようになる。大人達が指導すべきは、感情はコントロールでき、自らの感情に関わらず正しい行動は出来ることを教えるべきだ。日本の学校現場にLGBT教育を持ち込むならば、決して美化することなく、前述した社会的悪影響があることも深く考慮して、学校現場での教育を監視していくことだ。活動家たちに子供達につけ込む隙を与えてはいけない。

さらに、欧米では未成年者による安易な「性転換手術」や「ホルモン療法」の結果、子供達が大人になって後悔している事例が数多く報告されている。しかし、一端転換したものを元に戻すことはできない。子供達がこうした性転換手術や治療の被害にあわないように、未成年者に対する「性転換手術」や「ホルモン治療」は絶対に日本で許可すべきではない。

過去四半世紀にわたってフェミニストたちに我が国の家族制度は破壊され、未婚や離婚は増加の一途を辿っている。今度はLGBT活動家達による社会破壊を許すのだろうか。欧米諸国の轍を踏まないためにも、ウィリアムズ氏の懸念を肝に銘じ、日本の伝統文化と社会を守っていかなければいけない。手遅れにならないように・・・