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2014年11月24日付け産経新聞『サンデー正論』欄に、山本所長、藤木上席研究員のインタビューが掲載されています。

2014年以降の当研究所を中心とする国連活動について話をしました。

国連で戦っている民間人たち 「捏造で日本が潰される」

記事では、左派NGOなどが国連に様々な問題を持ち込み、問題を作り出していることを明らかにし、拉致事件や皇位継承(女性、女系天皇)の諸問題について他の団体が国連で発言出来るよう当研究所が積極的に支援を行っていることが書かれています。

一方で、このような活動の為には多額の費用を要し、左派NGOのような組織的支援のない中で活動を継続することの難しさが語られました。これからも当研究所が国連活動を続けられるよう皆様からのご支援をお願い申し上げます。

ご支援のお願い

2024年11月18日

女子差別撤廃委員会Ms. Ana Peláez Narváez議長
委員の皆様

日本の皇室典範関する勧告に反対し、削除を求める声明

国際歴史論戦研究所は、人権の歴史を研究し相互理解と協調を促進するために活動している日本のNGOです。当研究所の代表はジュネーブで開催された女子差別撤廃委員会89セッションに参加しました。女子差別撤廃委員会の委員の皆様の女性の人権向上にむけての多大な努力と貢献を深く尊敬申し上げております。

 しかしながら、日本に対する総括所見(CEDAW/C/JPN/CO/9)のパラグラフ11と12の皇室典範に関する勧告については、我々は次の理由で強く反対し、早急に削除を求めます。

第九回日本政府報告書に対する総括所見 (CEDAW/C/JPN/CO/9) パラグラフ 11. 日本の皇室典範の規定は委員会の権限の範囲外であるという締約国の立場に留意する。しかしながら、委員会は、皇統に属する男系の男子のみが皇位を継承することを認めることは、条約第1条および第2条と両立せず、条約の目的および趣旨に反すると考える。 パラグラフ12. 委員会は締約国に、皇位継承法を男女平等を確保するように改正した他締約国の良い取組に注目し、皇位継承に男女平等を保障するよう皇室典範の改正することを締約国に勧告する。

1.委員会が総括所見を発表する前に、日本のNGOは皇室典範について次の事実を含む様々な情報を委員会にお伝えしました。

  • 日本における「皇位の継承」は、わが国固有の国内問題であり、女性差別撤廃条約の管轄外の問題である。
  • 「国連憲章」第2条7項は「この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではない」としている。
  • 「男系男子」による「皇位の継承」は、建国以来、2千年近くにわたって伝えられてきた我が国の、かけがえのない「皇室の伝統」で、「女性の差別」とは無関係である。
  • ローマ法王もイスラム聖職者もチベットのダライラマも男性である。CEDAWはこれらにも「女性差別の撤廃」を要求するだろうか。
  • 皇室典範は、民間人の「女性」が男性皇族との婚姻によって「皇族」となることを認めながら、民間人の「男性」が「皇族」となることは認めていない。これは、男性に対する逆の差別と言える。

 委員の皆様はこれらの事実を知った上でもなお、皇室典範が条約第1条および第2条と両立しないとして男女平等を保証するためとして法の改正を勧告しました。これは、委員会が日本の歴史、伝統、文化に対する無理解であることを明らかにするもので、日本の皇室に対して礼を欠くものです。日本人の殆どはこの勧告に対して非常に不愉快に思い、怒りを感じています。

2.第九回日本政府報告書(CEDAW/C/JPN/9)パラグラフ12 と、2024年10月17日の2105th Meetingにおける日本政府の回答は、我々日本人の皇室に対する共通の理解と全く変わらないものです。

「我が国の皇室制度も諸外国の王室制度も、それぞれの国の歴史や伝統を背景に、国民の支持を得て今日に至っているものであり、皇室典範に定める我が国の皇位継承の在り方は、国家の基本に関わる事項である。」

CEDAWが締約国に歴史と伝統を変えるように勧告することは、国連の全ての条約体委員会の信用と信頼を大きく損なうことになります。

3.2024年10月17日の2105th Meetingの議事録(CEDAW/C/SR.2105)において、議長Ms. Ana Peláez Narváezは次のように発言しています。

「パラグラフ69

委員会の任務は男女平等と全ての女子差別を撤廃することにあり、差別的な皇位継承法も含まれます。他の締約国についても同様の問題を提起しております。条約のもと、全ての性差別的な法は本委員会と直接関係があるものです。」

CEDAW89セッションにおいては、サウジアラビアも審査対象国でした。同国は1992年に統治基本法(Basic Law of Governance)を制定し、その第五条で「王国の統治は、建国の父アブドルアジーズ・ビン・アブドッラハマーン・アルファイサイル・アールサウードの息子およびその孫に委ねられるものとする。」と定めています。日本とサウジ両国の法で男性の継承を定めていますが、委員会はサウジアラビアへの総括所見(CEDAW/C/SAU/CO/5)の中で、この第5条については触れず、改正を勧告していません。委員会のこの見解はダブルスタンダードではないでしょうか。

我々は、CEDAWの「あらゆる形態の女性差別を撤廃するための必要な措置をとる決意」に賛同し、女性の人権が苦みと差別から護られることを願っています。一方で、国の長い伝統と歴史によって継承、形成された王室や皇室は「性差別」とは全く関係ないものです。国連の条約体委員会が干渉すべき問題ではないことを、大多数の日本人を代弁して我々はここに明確にお伝えします。

従って、我々はCEDAWが日本の皇室典範に関係する勧告を総括所見から削除することを強く要請いたします。

2024年10月17日、ジュネーブ国連欧州本部にて女子差別撤廃委員会(以下、委員会)の対日本審査会が行われた。会期後に委員会が発表した総括所見では、皇室典範で定める皇位継承の男系男子は女子差別撤廃条約に反するとして「男女平等を保障するために皇室典範を改正するよう」勧告した。

日本の伝統文化と国柄を無視した信じがたい傲慢で侮辱的な勧告であることは言うまでもない。日本政府は抗議しているが、委員会がこの勧告を削除しない場合は、国連分担金の支払いを停止し、条約を廃棄すべきだと当研究所は考える。国連の勧告に従わないのは「世界の流れに逆行してる」、「国際社会に後れをとる」という声があるが、審査プロセスの実態を知らない浅はかな意見である。

まずは、委員会において皇室典範問題がどのように扱われてきたか、審査の過程、問題点を述べる。

条約締結前 に予想されていた懸念

1985(昭和60)年、日本政府が女子差別撤廃条約を締結する直前の5月29日第102回衆議院外務委員会で、当時の安倍晋太郎外相は条約と皇室典範との関係について次のように述べた。

「皇位継承資格が男系の男子の皇族に限られていることは、本条約第一条に定義されているところの女子に対する差別には該当しない。」

日本政府は条約締結前から、皇室典範との関係について疑問の出る可能性があることを認識していたのだ。

対日審査会における皇室典範問題

 2001年に愛子内親王が誕生された2年後の2003年、対日審査会でフィリピンのマナロ委員から初めて皇室についての質問があった。

「皇室と日本政府は、プリンセス愛子が女性天皇になるように法を改正することを検討したことがありますか?」

日本政府はこう答えている。

「皇室典範では皇位継承は男子のみです。一方、天照大御神は皇室の祖先であり、日本の歴史には7人の女系天皇がいました。しかしながら、プリンセス愛子が女性天皇になる可能性はありません。」

この時の総括所見で、皇室典範は取り上げられなかった。

2016年の女子差別撤廃員会の対日審査会では、皇室典範の話は一切出なかった。にもかかわらず、会期後に発表されようとした総括所見に「皇室典範の男系男子は女性差別」という勧告が盛り込まれそうになった。議論されなかった問題を総括所見で扱うのは手続き上の問題がある。日本政府からの抗議もあり、公開前に削除された。

次に不意打ちが起こった。2020年3月9日付で委員会が発表した「日本政府への事前質問リスト(CEDAW/C/JPN/QPR/9)」に突然、皇室典範問題に関する質問事項が記された。

「女性の皇位継承が可能になることを想定した措置についての詳細を説明せよ。」

なぜこの質問が出たのか。委員会は事前質問リストを作成する前にNGOからの意見や情報を受け付ける。その中に日本のNGO「公益社団法人 自由人権協会 」が提出した意見書があった。「皇室典範が天皇となりうる者を男系男子にしか認めないのは、女子差別撤廃条約の差別の定義に該当する」というものだった。

この意見書は受付締切後に提出されたもので、通常であれば委員に無視されるべきものである。ところが、皇室典範問題を扱いたかった委員にとっては好都合の内容だったため取り上げたのだ。

事前質問リストに対して、日本政府は報告書で回答せねばならない。2021年9月、第9回政府報告書(CEDAW/C/JPN/9)で次のように回答した。

「我が国の皇室制度も諸外国の王室制度も、それぞれの国の歴史や伝統を背景に、国民の支持を得て今日に至っているものであり、皇室典範に定める我が国の皇位継承の在り方は、国家の基本に関わる事項である。女性に対する差別の撤廃を目的とする本条約の趣旨に照らし、委員会が我が国の皇室典範について取り上げることは適当ではない。」

女子差別撤廃委員会89セッション 対日審査会にて

この流れで、2024年10月にジュネーブで行われる対日審査会においても皇室典範が扱われることは事前に分かっていた。頼もしいことに「皇統(男系男子)を守る国民連合の会」(葛城奈海会長)が対委員会活動に取り組むこととなった。事前意見書提出、現地での会合に参加し、公開会合でのNGO発言、追加意見書提出、パンフレットを委員たちに直接手渡して説明もした。皇室典範が女性差別とは全く関係ないという様々な資料や情報は委員に伝わっていたはずだ。

10月17日に対日審査会が行われた。委員と日本政府代表団が参加し、政府報告書について委員から質問、政府代表団から回答、委員から追加質問の形で進行される。

皇室典範については、キューバのMs. Yamila González Ferrer委員が質問した。

「男女の平等を確保するための皇室典範の改正などについて検討されることをお願いいたします。」

日本政府代表団からは内閣官房が回答した。

「皇室典範に定める我が国の皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項でございます。女性に対する差別の撤廃を目的とする本条約の趣旨に照らし、委員会が我が国の皇室典範について取り上げることは適当ではない、ということを申し上げて答えといたします。」

常に弱腰の日本政府にしては、毅然とした立派な回答であった。我々は思わず支持を表明する拍手をした。

ところがその直後、本来なら意見を言う立場にない議長でスペインのMs. Ana Peláez Narváez が反論するかのように発言した。

「日本だけでなくすべてのそのような差別的な法律がある国に対しては同様の質問をしております。私自身の国、スペインもそのうちの一つです。従ってこのトピックは女子差別撤廃条約に関係のあるものとだと申し上げたいと思います。委員会として適切な質問だというふうに思っております。」

会場で大きな拍手が起こった。我々以外の日本人NGOは、男系男子に反対し皇室典範改正に賛同する日本人だったのだ。委員会はスペインも諸外国の王室も日本の皇室も混ぜ合わせて、委員会の使命であるかのように男女同じを押し付けた。国の伝統文化を考慮せず、皇室への尊敬の念もないことが明白となった。

委員会は、会期後に発表した総括所見(CEDAW/C/JPN/CO/9)で、皇室典範について日本政府に対し次のように勧告した。

「委員会は締約国に、皇位継承法を男女平等を確保するように改正した他締約国の良い取組に注目し、皇位継承に男女平等を保障するよう皇室典範の改正することを勧告する。」

女子差別撤廃委員会 審査の実態

諸国の一般の人は、国連の勧告というのは、立派な専門家や研究者が慎重に綿密に調べ上げて結論を出すのだろうと想像するかもしれないが、実態はまったく違っている。

エキスパートと称される23名の委員は、世界各国から選出された有識者だが、自国に明白なる人権問題を多く抱えている国の出身者も多い。会期中はかなりの過密スケジュールで、一つの問題について丁寧に調べることは不可能だ。勧告というのは短期間で数名の委員が作文するのが常態である。対国連活動に熱心な日本のNGOはいわゆる左派系団体だ。彼らは決して日本の世論を代表している論者ではないが、リベラル、フェミニスト思想の委員とは多くの問題について方向性が一致する。

 実は今回の委員会ではサウジアラビアも審査対象国であった。同国は1992年に制定した統治基本法の第五条で、王国の統治は「息子およびその子孫」が継承すると定めている。ところが、委員会はサウジアラビアに対してはこの第五条の改正を勧告していない。日本の皇室典範だけが女性差別だというのか。ダブルスタンダードの審査である。

日本に女子差別撤廃条約は不要

勧告に法的拘束力は無いとはいえ、日本国憲法では条約を誠実に遵守することが規定されている。1985年に日本が女子差別撤廃条約を締結してから40年が経とうとしているが、この間の委員会からの勧告で社会が良くなったのだろうか。当研究所は、今後全ての勧告を受け入れて履行したら、次世代に繋げるべき日本の姿はなくなると考える。

国連分担金を出して国を壊されるようなことをこれ以上続ける必要はない。日本のことは、日本人で決めれば良い。ローマ法王の例を見ても分かるとおり、それぞれの国には歴史と文化に基づく伝統がある。建国以来、男系を守ってきた皇統を考慮しないとは、それ自体、日本を軽視した振る舞いである。今回の皇室典範に関する非常識な勧告だけを取り上げても、この条約を廃棄する充分な理由である。

日本の皇室典範に関する委員会勧告に反対し削除を求める

 以上の主張の下に、当研究所は委員会による日本の皇室典範に関する勧告に反対し削除を求める。2024年11月18日、当研究所は委員会に宛て、直ちに勧告の削除を求める意見を送ったことを報告する。