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令和5年(2023年)9月

国際歴史論戦研究所 フェロー

白川司

【英語版】 https://i-rich.org/?p=1756

1.ガラパゴス的平和主義の原点

 日本学術会議が設立されたのは、GHQ(連合軍総司令部)統治下の1949年で、敗戦の反動から戦前に肯定されてきたものが理屈抜きで否定された時期である。この空気こそが、本来は日本の科学技術を支えるべき国立アカデミーを、「ガラパゴス的平和主義」のプロパガンダ機関に堕落させた根本原因だろう。

 時の吉田茂総理大臣は、日本学術会議に対して「政府の予算を使っていながら、政府批判や政治的な議論ばかりをやっている」と不満を持ち、政府機関から民間に移管することを目指した。だが、初代会長である亀山直人はGHQの名前を出して吉田を牽制して、結局、時間切れで果たせなかった。

 GHQ司令官のダグラス・マッカーサーは、就任当初は日本の非軍事化に情熱を燃やしたが、思想・学術面において最も力を注いだのが1945年に始まる公職追放と日本学術会議の創設だった。

2.左翼だらけの日本学術会議

 公職追放では保守的な思想を持つ数多くの政治家、言論人、経済人、学者、教師などが職を奪われた。追放処分を受けた者には戦後日本の復興に欠くことのできない人材も数多く混じっていたが解除が少しずつ認められるようになるのは、1950年に入ってからだった。

 一方で、日本学術会議では当初から共産党の下部組織である「民主主義科学者協会(通称「民科」)」が幅をきかせていた。日本学術会議は再軍備化に対抗して、「軍事技術に貢献する研究をおこなわない」という趣旨の声明を出している。ちなみに、この声明の反復が2017年の「軍事的安全保障研究への声明」である。安全保障について66年ものあいだ姿勢を変えていないのである。

 民科は、1956年のスターリン批判から支持を失い、1960年代にはほぼ消滅したが、1965年に成立した日本科学者会議(通称「日科」)がそのあとを引き継いだ。日科は日本共産党からの一定の影響を受けており、その後もこのような学者組織を使って日本学術会議に一定の影響力を確保するというやり方をとり続けた。

 また、民科なきあとも、その法学者部門である「法律部会」は現在も存続して、護憲運動の頭脳、あるいは運動員組織として活動している。ちなみに、2020年に「任命拒否」された6名のうち松宮孝明氏、岡田政則氏、小沢隆一氏の3名は民主主義科学者協会法律部会の関係者である。

 留意すべきは、GHQが日本学術会議の「産みの親」であっても「育ての親」ではないことだ。マッカーサー自身は日本への当初の偏見を徐々に修正して最終的に日本の再軍備に踏み切るが、日本学術会議はマッカーサーの当初の偏見そのまま受け取り、温存させている。

 初代会長の亀山が吉田首相の民営化に反対する際にGHQの名前を出したことは先述したが、日本学術会議は共産党の思想に影響を受けながら、同時に、政府より力のあったGHQによって誕生したという強いプライドがある。日本学術会議が常に政府に対して居丈高であるのは、この意識が影響していると考えられる。

3.「戦前病」におかされた組織

 日本科学者会議が誕生した1965年は「学生運動の時代」だった。日本共産党は原水爆禁止運動を足がかりに平和運動を広め、ベトナム戦争に対する反戦運動が盛り上がった。日本学術会議の一部が、平和主義や左翼思想にどっぷりと浸かった学生運動のメンタリティを壮年期になっても引きずっていることは、「任命拒否」を受けた学者がテレビカメラの前で怒鳴りながら自己主張している様子からも見て取れる。

 日本学術会議の反政府的な発言に耳を傾けると、そこに「何でも戦前に結びつける」「保守的な政権がやることはすべて軍国主義につながる」といった病的なほどに短絡的な思考が見て取れる。私はこれを「戦前病」と名付けている。

 戦前病になると、与党政治家が安全保障政策を強化しようとすると、どこからともなく「軍靴の音」が鳴り響き、「自分たちがやらなければ、日本は軍国主義になる」と正義の炎を燃やすようになる。そして、これが日本学術会議に現在まで続くガラパゴス的平和主義のエネルギー源となっている。

4.任命権は総理大臣にある

 2020年の菅義偉総理大臣の任命拒否を批判する論拠として、1983年に中曽根内閣の総務長官の丹羽兵助が参議院文教委員会で「形だけの推薦制であって、学会のほうから推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」と答弁したことが挙げられてきた。

 この答弁の背景には、推薦候補の中から選挙で選ばれていた日本学術会議の会員が、現役会員からの推薦方式に変わったことがある。推薦方式では前制度より日本学術会議が恣意的に人選しやすくなる。

 だが、日本学術会議会員の地位は特別職国家公務員であり、総理大臣に任命権があることは日本学術会議法に明記されている。総理大臣の任命権に従うのは公務員の義務であり、そもそも人事の理由説明の必要はない。

 また、2003年の中央省庁等改革基本法に基づく総合科学技術会議の最終答申で、「設置形態については、欧米主要国のアカデミーの在り方は理想的方向と考えられ、日本学術会議についても、今後10年以内に改革の進捗状況を評価し、より適切な設置形態の在り方を検討していく」とされたことだ。これに従うなら、日本学術会議は2013年までになんらかの改革がなされてしかるべきである。

5.日本学術会議の速やかな解体を

 日本学術会議のこれまでの提言を見渡しても国民全体が納得できる社会的貢献をしたという事例が見つからない。2000年に考古学界の分野で捏造事件が起こったが、日本学術会議は何の解決策も提言できなかった。近年も、反政府提言ばかりが目立ち、新型コロナウイルス禍についても何の提言もおこなっていないのである。日本のトップクラスの頭脳が集まり海外の知見も熟知しているはずなのに、任命拒否問題への抗議に明け暮れて、日本国民が最も苦しんだ時期に政府機関でもある日本学術会議が何の提言もできなかった。血税より年間約10億円が注がれているが、日本学術会議側は国民の負託に応える気は見えない。

 また、日本学術会議は2021年度約2377億円の巨額の科研費の配分を決定する日本学術会議振興財団の審査委員に対し、各分野の重鎮という立場から影響力を行使している。科研費配分権という巨大利権を通して学術界全体を支配して、アカデミズムが左傾化して、政府の安全保障政策を邪魔して日本の安全保障が立ち後れる根本原因となっている。

 さらには、日本学術会議会員の中には中国人民解放軍のいわゆる「国防七校」の関係団体と関わっており、中国政府の外国人採用計画の「千人計画」に応じる会員おり、自国の軍事研究には反対しながら、中国の軍事研究に協力した事例もある。

 理工学系の科学者の専門は軍民にまたがるものが大半であるが、日本学術会議は軍事研究反対という政治プロパガンダ機関に固執して、研究に支障が出ている学者も少なくない。日本学術会議は人文科学系の共産党系会員の主張に支配されており、理化学系の会員がそれに引きずられ、一部の極左会員の主張が日本学術会議全体の主張となっている。

 日本学術会議を歴史的観点から検証すると、政府機関でありながら、日本人有権者の1%程度の支持率しかない日本共産党の影響を受けすぎている。日本政府は日本の安全保障のためにも速やかに日本学術会議の解体に着手すべきだろう。

国際歴史論戦研究所は以下の声明をユネスコ加盟国各国の委員会、政府代表部に送りました。
原文はこちらです。
https://i-rich.org/?p=747

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国際歴史論戦研究所 杉原誠四郎 会長

2022年5月

加盟国ユネスコ委員会、政府代表部

関係者各位

私たち国際歴史論戦研究所は非政府組織(NGO)で、公正な歴史研究を元に国際的な歴史論争に挑み正しい歴史認識を打ち立てることを本旨としている研究所です。

2022年1月28日、日本政府は国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対し「佐渡島の金山」を世界文化遺産として推薦することを表明した。「佐渡島の金山」は日本国佐渡島にある複数の金鉱山の史跡である。「佐渡島の金山」は古い歴史があり、日本の江戸時代(1603年~1868年)においては、採掘から精錬に至る全ての過程を伝統的な手工業によって行っていた。17世紀には年間400キログラム以上の金を産出して世界最大級の規模を誇っており、当時の技術の高さを今に伝えるこの史跡は、世界遺産としての価値が十分にあることから日本政府が推薦したものである。

ところが、韓国政府は「『佐渡の金山』が第二次世界大戦中に朝鮮人が強制労働をさせられた現場である」としてその世界遺産登録に強く反対しており、日本政府に対して推薦を中止するよう求めてきた。

「佐渡金山」の世界遺産登録の可否は「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が今後一年をかけて審査し、2023年6月乃至7月に「世界遺産委員会」が最終決議を行うが、この間、韓国政府が登録を妨害するために強力なロビー活動を国連において展開することが予想される。

しかしながら登録に反対する韓国政府の主張は全く事実に反している。それがいかに理不尽であり事実を歪曲しているかを以下簡潔に指摘する。

推薦の対象は江戸時代

「佐渡島の金山」推薦の対象となる期間は江戸時代に限られている。世界でもまれな手工業による金の生産システムを江戸時代に確立した点を評価したものであり、韓国は当事者ではない。従って韓国は本件の登録に反対できる立場にはない。

さらに「そこで強制労働があったから世界遺産に登録すべきではない」という韓国の主張そのものが間違っている。もしそうであればアテネの「パルテノン神殿」もローマの数々の巨大遺跡もすべて奴隷によって建設されたものであり、世界遺産としての資格を失うことになる。

「強制連行」は行われていない

第二次大戦中に「佐渡の金山」に朝鮮人労働者がいたことは事実である。しかし、それは韓国政府が主張するような「強制連行」によって連れてこられたのではない。「佐渡の金山」で働いた朝鮮人労働者の大部分は賃金の高い仕事を求めて自らやってきた人々である。当時朝鮮半島から日本本土へ渡るためには、さまざまな許可手続きが必要であり、日本への渡航を認められなかった多くの人々が高賃金を求めて日本本土へ密航した。1939年から1942年にかけて19,200人の密航者が摘発され、朝鮮半島へ強制送還されている。もし「強制連行」してまで朝鮮人を日本本土へ連れてくる必要があるなら、密航者を朝鮮半島へ強制送還するはずがない。

日本国民であった朝鮮人の「徴用」は合法

一部に「徴用」によって朝鮮半島から動員された労働者もいたが、当時日本と朝鮮は一つの国であり、朝鮮人も日本国民であった。従って日本国民である朝鮮人を徴用することは合法であった。戦前から日本が加盟していた「強制労働に関する条約(Forced Labour Convention)」では戦時労働動員である「徴用」は「強制労働(Forced Labour)」には含まれないと明記してあり、朝鮮人の徴用は国際法でも認められていた。日本政府も2021年4月に「朝鮮人戦時労働動員は強制労働に関する条約上の強制労働には該当しない」と閣議決定しており、岸田首相もこれを確認している。

奴隷労働はなかった

 「佐渡島の金山」でも民族差別的賃金体系は存在せず、給与も待遇も日本人と全く差別はなかった。賃金は出来高払いであり日本人よりも多く稼いだ朝鮮人労働者が多くいたことが信頼すべき一次資料からも明らかである。「強制連行して奴隷労働をさせた」という韓国の主張は日本を貶めるための「嘘」に過ぎない。

以上の通り、韓国の主張は史実を歪曲しており、全く根拠がない。韓国の目的は、歴史を修正して日本の過去を貶め、日本に対して外交的に優位に立つことであり、国連を利用して「情報戦」を展開しているのだ。 世界遺産登録に関連する国連諸機関が韓国側の一方的ロビー活動に惑わされて間違った判断を下すなら、日本国の名誉が深く傷つくのみならず、国連の信頼性を大きく損ねる結果を招くだろう。

ここに世界遺産登録に関わる国連諸機関の方々に対し、韓国の政治的プロパガンダに惑わされることなく、「佐渡島の金山」の歴史的価値を公正に評価頂き、世界文化遺産に登録頂くよう、日本国民として心より要望する次第である。

以上