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書名:『アメリカ人が語る 沈む超大国・アメリカの未来』
著者:マックス・フォン・シューラー著
出版社 ‏ : ‎ ハート出版 (2024/11/6)
発売日 ‏ : ‎ 2024/11/6
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本 ‏ : ‎ 208ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4802401833
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4802401838

本書はアメリカの陥っている危機的現状を様々な角度から赤裸々に描写し、そのアメリカを待ち受けている破滅的未来を、徹底的に明らかにする書である。そこには、日本で報道されている、或いは多くの日本人が思い描いているアメリカ、即ち、強く自由で希望に満ちた理想の国とはかけ離れたアメリカの真の姿が映し出されている。移民に悩まされ、左翼政権の異常な政策に蹂躙され、地方都市は荒廃し、極端な多様性尊重とLGBTQの掛け声で腐敗しきったアメリカの姿がある。

しかし、本書の目的は、単にアメリカの現状・恥部を暴き立てることではない。著者が本書を執筆して伝えたかったことは、何よりも、日本への警告である。アメリカの幻影を真実と妄信し、追従し、依存する日本に警鐘を鳴らすことである。このままでは、日本自体がアメリカと共に沈み崩壊していくことを、著者は何よりも憂慮し危惧するのである。

自国メディアの偏向報道を信じてトランプ政権を批判的に眺め、真のアメリカの姿を見失っている日本人たち発せられる著者の提言、破滅を免れるための提言は有意義であり、時宜にかなったものといえよう。

その提言は、待ったなしに急務の提言である。一人でも多くの日本人が、アメリカ崇拝から目を覚まし、自分の国は自分が守るという、至極当たり前のこと、即ち原点に戻ることが必要である。本書は日本人の覚醒を促し、日本の独立を守るために必要な原点に立ち戻らせてくれる書と言える。

また、この本の大きな特徴として、英語と日本語の両方が併記されているということである。英語のほうも恐らく高校生くらいの英語力なら楽に読めそうなくらい平易な英語である。併記の理由は詳らかではないが、大学や高校での英語の授業でも取り扱えるようにとの配慮であろうか。或いは、取り扱ってほしいという著者の願いが込められているのであろうか。

著者マックス・フォン・シュラーの略歴は次のとおりである。

本名、マックス・フォン・シュラー小林。

元海兵隊・歴史研究家。ドイツ系アメリカ人。

1974年岩国基地に米軍海兵隊として来日、その後日本、韓国で活動。

退役後、国際基督教大学、警備会社を経て、役者として「釣りバカ日誌8」等、ナレーターとして「足立美術館音声ガイド」等、日本で活動。

YouTube公式チャンネル「軍事歴史がMAXわかる!」でも情報発信中。

著書に『[普及版]アメリカ人が語る アメリカが隠しておきたい日本の歴史』『[普及版]アメリカ人が語る 内戦で崩壊するアメリカ』(ともにハート出版)、

『太平洋戦争 アメリカに嵌められた日本』(ワック)、『アメリカ白人の闇』(桜の花出版)、『アメリカはクーデターによって、社会主義国家になってしまった』(青林堂)などがある。

以下、本書の構成について概括する。

「第1章 現在のアメリカ」ではアメリカの抱える幾つもの病巣が抉り出される。左派黒人の横暴、不法移民の狼藉、薬物中毒者の増加、警察の縮小と治安悪化、多様性を謳うLGBTの割拠、滅亡に向かう地方都市、人種対立、アメリカ軍の弱体化、教育の左傾化、そして諸悪の根源であるフェミニストの存在。いずれもアメリカに根深い問題である。しかしこれらの幾つかは、決して日本の現状と無関係ではない。いや、無関係ではないどころか、日本の現状とも大いに重なる点ばかりである。日本の近未来図とも言えよう。

「第2章 アメリカの未来」では、2024年の大統領選の前でもあり、選挙の予想がなされ、トランプが当選した場合としなかった場合に関する予測がなされている。結果的にはトランプが当選したので、最悪の事態は避けられたと言えよう。

「第3章 日本は何をすべきか?」では、日本が崩壊しないために、日本がしてはいけないことについて先ず言及し、次に、すべきことについての提言がなされる。要は、自分の国を守るのは自分たちであるという、至極当然の、独立国であればあまりに当たり前のことなのだが、今の日本ではその当たり前のことすら、十分になされてはいない。

ひとつわからないのは、アメリカ、いや世界中の国々の潮流が、左翼に牛耳られるようになってしまったのか、左翼が蔓延したのかということである。そうなる前に何故何らかの手が打たれなかったのか。

そうした疑問は解決しないものの、本書は、日本人が覚醒し、独立を守るために何をすべきかについて考え行動する一助になる本である。是非多くの日本人に読んでほしい一冊である。

書評 呉善花『なぜ反日韓国に未来はないのか』(小学館 2013年)
評者 ゲストフェロー 宮本富士子

 韓国で反日の嵐が吹き荒れた文在寅政権時、まさに高麗連邦が誕生するかもしれないという危機感の中、国民は文在寅政権打倒のために文氏の在任期間中ソウルの光化門で毎週末大規模集会を続けてきた。また知識人たちは韓国人の骨髄までしみ込んだ反日フレームを拭い去るために各地で講演会を開いたり有名大学では正しい歴史認識を学ぶための真実フォーラムが開催されたりもした。

そしてこの日韓関係の危機を克服するために2019年に日韓危機の根源を突く本として李栄薫編著『反日種族主義』(未来社 2019年)が韓国で発刊され、約10万部のベストセラーとなった。同年、日本でも翻訳され『反日種族主義-日韓危機の根源』(文芸春秋 2019年)として出版された。6名の学者が立ち上がって書いた著書だ。それぞれの専門分野でいかに韓国の反日思想が荒唐無稽なのかを史実に基づいて分析した画期的な本だった。韓国でも大きな話題を呼んだが、結果として韓国人の反日感情は変わっただろうか。

が、学校教育での歴史教科書での日本悪玉論は今現在も変わらず、反日教育は依然と続けられている。全く変わってないのだ。私も内心で韓国人の根深い反日思想はそうやすやす変わるものではないと感じてきた。

韓国人の夫を持ち30年以上韓国社会の中で暮らしてきた私は「日本は台湾を朝鮮よりも長く統治し、台湾よりも莫大な投資をしたのにも関わらず、かたや台湾は親日、韓国は反日の理由はどこにあるのか、何がそうさせるのか?」と常に疑問を感じてきた。

その疑問に見事な回答を与えてくれたのがこの呉善花氏の2013年に出た著書『なぜ反日韓国に未来はないのか』(小学館 2013年)である。6章からなる分析は深く緻密になされ見事であり完璧だ。日本の大部分の有識者の見解は「日韓併合時代に生きた朝鮮の人は親日で戦後の李承晩政権から今日に至るまでの大統領の反日政策、反日教育によって韓国は反日国家となった」である。しかし、まず呉善花氏は「韓国の反日主義は単なる一つの政治政策ではない。重要なことは韓国は反日主義を国家の大義名分として出発した国家」とし、韓国憲法の前文自体が偽りであり、よって史実を捻じ曲げ、国民に対して徹底的に教育宣伝していったと指摘した。

この本は2013年に発刊されていて『反日種族主義』より6年も前だ。『反日種族主義』は代表的な反日の6つのテーマにおける歪曲された内容と実際はどうだったのかを説明している。呉善花氏の反日感情の分析は韓国人のDNA、民族の血、思考回路の原点にまでさらに掘り下げられている。私が長年韓国社会の中で感じていた思いが活字となって明確に説明されていた。「これだ!これ!」と共感し実に痛快だった。そして呉善花氏の分析力の凄さに驚嘆した。それは第4章の「なぜ反日感情はぬぐえないのか」に明確に描写されてある。「日本統治時代への恨みが反日の根拠となっているのではなく、蔑視すべき民族(日本)が自分たちを統治したことが許せずそれが反日民族主義を生み出している。」 このようにこの第4章は、ほかのどの学者も分析できない韓国人の深層心理を解明している。

142ページにこういう文章がある。「生来の野蛮で侵略的な資質を持つ日本民族が我が民族の聖なる血の一体性を凌辱した。」 反日は生理的反応に近い怒りから生まれた感情である。私はその感情を動機として多くのドラマ、映画ミュージカルが作られ、国民はそれを真実だと信じてしまうと見ている。この負のスパイラルが韓国人の反日感情を増幅させたのだ。「その歴史観は虚偽捏造であり真実はこうだ」と訴えるまともな学者が現れても、この根深い価値観が骨の髄までしみ込み、すぐには変わらないのである。

しかしこういう韓国でも慰安婦像撤去と韓国の歴史教科書から慰安婦の記述を削除するために活動してきた金柄憲氏を代表とした慰安婦法廃止国民行動の活動も6年目に入った。初期に比べれば大分状況が好転し、正義連側の活動が小規模になっているということは大きな変化だと言える。尹大統領がこの書評の執筆時点で、4月4日、憲法裁判所の決定により大統領を辞めさせられたが、大統領在任中、政権当初から反日政策をしなかったというのも近年における韓国の大きな変化だと言える。前述したように歴代のすべての大統領が反日政策をしてきたのにも関わらず、尹大統領は国益のためにそれをしてこなかったのだ。

話は前後するが歴代大統領の手を変え品を変えての反日政策の内容はここまで酷かったのかと改めて驚愕した。呉善花氏は中国人以上に韓国の反日感情が強いとも指摘している。

 本書は2013年当時の韓国の情勢の深刻さを憂い執筆されたと推測される。その憂いの詳細が多方面にわたって第6章に書かれている。だが、ここで示されている凶悪犯罪、社会問題に関して、それが山積みなのは、現在では日本のほうではないかと感じられるほどだ。

実際前述したように反日の根は深く深刻だが、その反面、韓国の書店に行けば韓国語に翻訳された多くの日本の小説や漫画があり、テレビでも1日中日本のアニメが流れ日本食のレストランはあちこちにある。最近はSNSを通じて簡単に日本の文化、歌謡、ドラマに接することができ日本の俳優やタレントも韓国で人気を博している。若者たちの中には親日家のユーチューバーも多く出現し購読者もかなり多い。日韓併合時代の真実も学校では教えられなくてもSNSで知ることができる。

また特に現在はJ-POPの人気はKーPOPを凌駕したという説もあるほどだ。以前は親日=悪という概念だったが、今やネット空間を通して自然な形で変わっていくのではないのかと思えるくらいだ。呉善花氏も反日教育を受けてきたので、他の韓国人同様反日だったが、日本に来てから韓国の歴史認識に疑問を抱き、近世から近代にかけての日韓歴史の本を手当たり次第に読み反日の魔法から解かれたのだ。

韓国の現実社会においては「客観的な世界情勢の中で日本統治を眺めてみようとすることもないし、書物もない」と呉善花氏はこの本の中で指摘しているが、もしこの『なぜ反日韓国に未来はないのか』という本が韓国で翻訳され出版されたら一体どうなるだろうか? ここまで見事に分析された本はないと思うし、個人的にはいつか近いうちに韓国で出版されたらと願っている。そうなれば韓国に未来はあるだろう。そして他方で、日本に対しては日本で自虐史観からの脱却が性急になされることを願うばかりだ。この本の中で共感し的を射た表現と思った箇所は数多くあるが、最後にこのフレーズを紹介しておきたい。

道徳的に上の者が道徳的に劣った下の者を常に訓示教育、感化していかなくてはならないという儒教の考え方が侮日観を形づくっていて、これが韓国の対日民族優越意識の根本にある。さらに韓国には自らこそが中華の正統なる継承者であるという小中華主義の誇りから民族優越主義がある。そのため対日民族優越意識が一層のこと強固なものとなっているといってよい。

このような意識は50代以上の世代には強く当たると思われる。が、今の若者たちはこの意識がやや薄まっているようにも思われる。が、しかし、いずれにしても韓国の偏向した歴史教科書は正しい日韓関係構築のため、至急改訂されなければならない。

書評:長谷亮介『朝鮮人「徴用工」問題 史料を読み解く』 (草思社 2024)

評者:一二三朋子(国際歴史論戦研究所 上席研究員)

本書は、従来の朝鮮人「徴用工」問題に、画期的な一石を投じる学術書である。戦後20年ほど経た頃から、巷に流布してきた学説、即ち、戦時中、朝鮮人が朝鮮半島から「強制連行」され、日本の炭鉱や鉱山などで「強制労働」をさせられてきたという学説に、一次史料の検証を積み重ね、「強制連行・強制労働」説を、完膚なきまでに論破したものである。

筆者の長谷亮介氏は、歴史認識問題研究会の研究員であり、麗澤大学国際問題研究センター客員研究員でもある。1986年、熊本生まれ。熊本大学文学部歴史学科を卒業し、法政大学大学院国際日本学インスティテュート博士後期課程を修了した。学術博士。大学院修了後、歴史認識問題研究会(会長 西岡力)に所属し、朝鮮人戦時労働者問題を中心に研究を進めている。共著に『朝鮮人戦時労働の実態』(一般財団法人産業遺産国民会議)がある。

「強制連行」「強制労働」説が湧き上がったのは、1965年、朴慶植という人物が出版した『朝鮮人強制連行の記録』に端を発する。現在では朴慶植の歴史考察には大きな問題があることが判明している。それにもかかわらず、「強制連行・強制労働」説は下火となるどころか、いまだにくすぶり続け、ともすれば政治的に利用され、さらに苛烈に再燃しかねない状況である。これは、歴史学界の学術上だけの問題ではない。現に、2018年には韓国の大法院(最高裁)が新日鉄住金に対して戦時中の韓国人元工員に損害賠償を支払う判決を下した。この韓国大法院判決後、強制連行されて無理やり働かされたとして日本企業に「賠償金」を求める裁判が増加し、全て原告側の勝訴となっている。これらの判決は全て、1965年に締結した日韓請求権協定に反する判決内容であることは言うまでもない。かように、歴史上の問題は政治的に利用され易いのである。

本書は2部構成となっている。

第1部は、朝鮮人戦時労働者「強制連行」「強制労働」説への反論である。第1章は「強制連行」説への反論であり、資料に基づき、募集の手続きなどを詳述し、同時に、大半が自発渡航であったことを論証する。第2章では「強制労働」説に対する反論である。賃金・食事・労働時間など、具体的に史料を分析する。

第2部は、朝鮮人労働者の実態を、一次史料から克明に描き出す。第3章では『特高月報』に基づき朝鮮人労働者の実態を明らかにする。『特高月報』とは、内務省警保局保安課がまとめたものである。朝鮮人労働者による争議の全容などが整理されている。第4章では北海道の日曹天塩炭鉱、第5章では佐渡金山、第6章では三井三池炭鉱が取り上げられる。これらの調査を通して、「強制労働」が事実ではないことを検証し、客観的視点から見た史実が明らかにされる。

本書を通して見えてくるのは、筆者の歴史研究者としての基本に徹した研究態度である。地道に一次史料を発掘し、厳正に分析・精査する。そうした地道な作業から導き出される学説・主張は客観的であり、揺るぎないものである。

「強制連行」説や「強制労働」説の支持者が自説の根拠とするものの多くは韓国人の証言である。証言のみを偏重し、「生き証人」と祭り上げられる。その証言に異議を唱えたり疑義を呈するだけで、感情的になって激昂し「名誉を傷つけられた云々」と猛反発・猛反撃をしてくるから手が付けられない。こうした傾向は、特に慰安婦問題以降に顕著になってきたといえよう。また、一次史料ではあるものの恣意的に取り上げたものや恣意的解釈に基づくものが目立つ。一次史料のうち、自説にとって有利な個所のみを取り上げ、不都合なことには言及しないのである。さらには、自説に有利なように強引に歪曲した解釈を加える。

筆者は、こうした歴史学界の趨勢に果敢に挑み、学問としての危うい在り方に厳しく警鐘を鳴らす。歴史を探求する者に、偏見や先入観があってはならない。本書を手にした「強制連行派」には、真摯に一次史料の全てに目を通し、学術的な反論を期待したい。そうすることが、学問の健全な発展に寄与するである。また日韓の根深い、終わることのない(韓国側が一度解決した問題を何度も蒸し返すがために終わらないのであるが)歴史問題解決の糸口となるであろう。

また、日韓の真の友好を推進するために、反日思想に染まった韓国人には、歪曲と捏造の歴史から目を覚ますために、是非読んでほしい。反日思想を植え付けられた韓国人とは、ある意味で韓国政府の犠牲者ともいえよう。一方で、「強制連行・強制労働」の加害者に仕立て上げられた日本人にも是非、読んでもらいたい。たとえ読まなくとも、手に取って目次に目を通し「強制連行・強制労働」説のうさん臭さを感じるだけでもよい。反論すべきときに反論しないことは、超限戦(歴史戦)の敗北であり、武力戦・軍事戦よりも大きな禍根を残すことになる。真実を知ることは、長い目で見れば、武力・軍事力よりも国の強さの根幹となるのである。

Making of The Rape of Nanking: A Big Lie from World War ll English Edition | by M Kanzako and Akira Kashima | Jan 6, 2021

書評 神迫幹子・鹿島明[かんざこみきこ、かしまあきら、KANZAKO, Mikiko, KASHIMA, Akira]

この書評は、著者によるもので、自著の紹介を兼ねている。カナダでアイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』(1997年11月)が真実の歴史としてカナダ人に受け取られている状況で、日系カナダ人が真実の歴史を求めてこの著書を公刊した。著者2人は日本で南京事件の研究では泰斗と呼ぶべき阿羅健一氏らと緊密に連絡を取り、記述に間違いのないことを確かめながら、記述を続けていった。にほんでは南京事件の研究が進み、現在では日本軍による国際法に反するいわゆる南京事件は存在しなかったことがじっしょうされており、2023年には南京事件を実証する歴史史料は見当たない旨、政府が閣議決定をするに至っている。

Making of The Rape of Nanking: A Big Lie from World War ll

著者、神迫幹子と鹿島明の共著による本書は、アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』1997年11月)に書かれている事実の歪曲や捏造を詳細に検証している。このようなチャンの本に対する反論書は日本語ではすでに何冊も出版されているが、英語での出版は初めてのことではないだろうか。

北米でベストセラーになり、多くの人々が今でもチャンの本を信じている現状を踏まえると、本書が出版された意義は大きい。

真珠湾で「騙し討ちをした日本」にルーツを持つことの罪悪感を感じていた日系人もいたことだろう。そして、再び日系カナダ人やカナダ在住の日本人は、「南京市民30万人を虐殺した」という嘘に基づく、罪悪感や贖罪意識を抱きながら未来永劫生きていかなければならないのか。そのようなことがあってはならない。そのためにも私たちは歴史を学ぶ必要がある。

Making of The Rape of Nanking: A Big Lie from World War ll』は私家版であるが、アマゾンで購入できる。要点が簡潔にまとめられており、本書の最後に掲載されている写真は当時の南京市の様子が手に取るようにわかる。読者自身が自分の頭で考える過程の第一歩となる一冊である。

書評

Making of The Rape of Nanking: A Big Lie from World War ll』を出版した直後に筆者の家族に本書を読んでもらった。読後の彼の第一声は「高校生向きの内容ではない!」だった。それは『ザ・レイプ・オブ・南京』の内容が本書に引用されており、読むに堪えられない蛮行の描写に対する彼の素直な反応だった。同様に筆者の知り合いで、元高校教師で歴史を教えていたN氏にも本書を読んでもらったが、彼も高校生向きではないという感想を述べた。

オンタリオ州の高校で使われている教科書の記述の一部をここで紹介したい。

日本の指導者たちは、民間人を標的した激しい爆撃を命じて、何百万人もの死傷者を出し、また地上でも残虐行為を行った。中国の首都、南京では、6週間にも及ぶ大虐殺が行われ、この間、日本兵は30万人もの中国人兵士や民間人を強姦し、殺害した。日本軍は戦争中、化学兵器も使用した。これらの残虐行為により、米国をはじめとする西側諸国は日本に対する態度を硬化させ始めたのである。

( “Creating Canada: A History 1914 to the Present”, 2nd ed. McGraw-Hill Ryerson 2014, Unit 3, pg. 278)

『Creating Canada: A History 1914 to the Present』には6週間に及ぶ中国兵士、市民に対する虐殺、30万人に及ぶ犠牲者、残虐行為などの記述があるが、これはチャンの本と一致している。

「私が高校で教えていた時にはこのような内容はカリキュラムになかった」とN氏は言う。高校の教科書に前述のような記載があることもすぐには信じがたい様子だった。歴史を教えていた教師である彼が本書を読むことで、南京事件について興味をもち、自分自身で考えてくれることを切に願っている。

高校生以外にも『Making of The Rape of Nanking: A Big Lie from World War ll』の読者として筆者が想定していたのが、歴史を知らない日系カナダ人だ。本書を読んでほしいと思う理想の読者が、偶然にも筆者の友人のM子さんだった。両親が日本人で日本からカナダに移住、そしてM子さんはカナダ生まれである。彼女は、1997年にオンタリオ州議会に提出された南京虐殺記念日制定法案の成立を支持してた1人である。日本の残虐行為を信じて疑わなかったのだろう。彼女に本書の話をしたとき、「えー、南京虐殺は嘘だったの?」とただただ驚くばかりだった。

中国による情報戦はアジアを越え世界中に広がっている。当然ながらアメリカやカナダも例外ではない。カナダでは、2017年にオンタリオ州議会が南京虐殺記念日の動議を可決した。これは法的拘束力はなく、さらに、124名の州議会議員のうち採決に参加したのはわずか数十名というお粗末さである。しかし、「動議が可決された」という事実は情報戦、歴史戦において非常に有効な武器となる。2018年にはオンタリオ州のリッチモンドヒル市内の墓地に南京虐殺記念碑が建立された。この記念碑が建立されて以来、毎年12月に当地で慰霊祭が行われている。

本書は以前に出版された冊子「慰安婦って何?」からアイデアを得ている。チャン本の問題点を明らかにして、一人でも多くの人々に読んでもらいたい、という強い思いに動かされて本書の出版プロジェクトを立ち上げた。大規模で長期に渡る強力なプロパガンダに立ち向かうには、我々はあまりにも微力であるが、狡猾な欺瞞の呪縛から解放されるために何かせずにはいられない。M子 さんやN氏のような善良な人たち、何も知らない高校生が騙されているのに、何もしない、という選択肢はなかった。

本書の焦点をチャンの捏造本に当てたのは、それが西側英語圏では、一般の人々の間でよく知られており、歴史家やアカデミアの間で高く評価されているからである。本書では、短い記述であるが、詳しく知りたい読者のためにミニー・ヴォートリン日記や極東軍事裁判(東京裁判)記録等の一級資料に簡単にアクセスできるよう工夫している。特に若い人たちに自分の頭で考え事実とフィクションを見極める能力を養うことがどんなに大切かを知って欲しい。

今回、第2次世界大戦に関わり真実の史実の探求で著名な、麗澤大学のジェイソン・モーガン准教授にMaking of The Rape of Nanking: A Big Lie from World War ll』を読み込み書評をいただいたことに大変感謝している。その中に書かれたモーガン准教授の言葉に共感し、それをここで紹介したい。

 “There are no taboos, dogmas, or epithets in historical work. Truth is the only standard, and the only goal.” (歴史的な仕事には、タブーも教義も蔑称もない。真実だけが唯一の基準であり、唯一の目標である)*

真実の史実の探求に時効はない。最終的には真実を求め、真実を語ろうとする人たちだけによって書かれるべきものだと思う。

日本が元気になれば世界が元気で平和になる、と信じている著者にとっての願いは、日本が真の独立主権国家として蘇ることである。その過程において、日本の歴史は他国の干渉抜きで日本国民が取り戻すべきものである。政治的な忖度や御用学者に用はない。

* Jason M. Morgan, A Massacre in the Making: Separating Truth from Fiction about Nanking, Subsack, July 26, 2034

著者:李 栄薫(編著)
日本語版書籍:『反日種族主義 日韓危機の根源』(2019年、文藝春秋)

解題

 「反日種族主義」という本は2019年7月に発刊され、韓国で11万部売れ、日本では40万部を越えるベストセラーとなった。代表著者の李栄熏校長は反日種族主義とは「隣の日本を永遠の仇と捉える敵対感情である」とし民族ではなく種族と言う言葉を使った。「種族は隣人を悪の種族と見なす。客観的論議が許容されない不変の敵対感情、嘘は種族を結束させるトーテムの役割」だからだ。発刊された当時は文在寅政権下で反日政策の嵐が吹き荒れ、日韓関係が最悪となった時だった。学校の教科書はいわゆる徴用工像、慰安婦像の写真が表紙から大々的に塗装され、街もテレビ報道も何もかもが反日一色となった。朴槿恵前大統領や政権下の要人も数多く収監された後、高麗連邦が生まれかねない危機的な状況下だった。その時に救世主のごとき現れたのがこの「反日種族主義」という本である。赤化統一を防
ぐためには破綻寸前にまでいった日韓関係を取り戻すため、各地で有識者を呼びセミナーが開かれた。国民の啓蒙に韓国内の愛国保守国民はこの本を何十冊も購入し人々に配る等、必死だった。

 この本の出だしである李栄熏校長のプロローグが特に衝撃的だった。「嘘をつく国民、嘘をつく政治、嘘つきの学問、嘘の裁判、反日種族主義」というタイトルだ。長年、心のなかでモヤモヤと燻り続け爆発寸前の日本人の感情を韓国の学者が見事に言ってのけてくれたことに感動した日本人も多いだろう。その中の一説をここにあげる。「この国の国民が嘘を嘘とも思わず、この国の歴史学や社会学は嘘の温床、この国の大学は嘘の製造工場」歯に衣着せぬこの文章に真実を追求する学者の良心的レベルの高さを感じてやまない。

 韓国では1965年以降、小中高の学校教科書で日本の統治時代を7奪と教えてきた。その7つは国王、主権、土地、国語、姓名、命、資源だ。これをほとんどの国民はそう信じている。教科書がそうであり、ドラマ、映画がそうなので、日本人が真実を語ろうとしても客観的論議が許容されず、
感情的になる。この問題を見事に覆し、史実を資料を下に説明したのが共同著者の六名の学者だ。
 韓国人は「徴用」という単語に「強制」という単語をわざわざつけ、日本軍が朝鮮人を無理やり日本に連れていき過酷な労働を強いたと思い込んでいる。この徴用工問題の嘘を覆した李宇衍氏は問題の元凶が1965年に日本の朝総連系の朝鮮大学の教員朴慶植の書いた「朝鮮人強制連行の記録」だ
と指摘し、韓国の教育界が60年間もこの本を何ら検証もせず参考にして学校の歴史教科書を作成したと明らかにした。

 陸軍特別志願兵が一体どんな存在であったかを書いた元高麗大学教授の鄭安基氏は、帝国陸軍の訓練を受けた朝鮮出身の陸軍特別志願兵は日本の天皇に忠誠を誓ったからこそ独立後、大韓民国に尽忠報国でき、抜群の戦闘指揮能力をもって韓国戦争で国際共産勢力の南進を阻止することができたとした。李氏朝鮮時代にはなかった知識と技術、そして勤勉性と責任感を体得した陸軍特別志願兵出身者は第二次世界大戦後、韓国建国の重要な役割を果たしたとはっきりと主張した。またそれは同時に日本の先人たちの朝鮮統治が如何に立派であったかという証明にもなるのだ。

 この本は「土地を奪い、米の収奪、命を奪い、貞操を奪った極悪非道な日本人」という一般韓国民の概念を間違いなく払拭してくれる本であり先人の名誉を回復してくれる本だ。上でも述べたが韓国では11万部を超えるベストセラーとなったが、残念なことに今現在も嘘の歴史教科書はそのまま使われ、小中高の学校の教育現場では嘘の教育が毎日なされていることを考えると韓国ではこれからもさらにこの本が普及されることを心より願ってやまない。まずはさらにもっと多くの政治家、言論人、教育者が読むべきだ。この画期的な著書「反日種族主義」を書かれた六名の先生方には心より感謝する。もう一つ欲を言えば、「植民地支配」という表現が所々に見られるが、実際日本は本当に何もかも与え尽くしたのであって、植民地とは土地を搾取し隷属させるという意味があるので、この植民地支配という言葉を他の表現に変えていただければ申し分ない本だ。

書籍

日本語版:https://www.amazon.co.jp/dp/4163911588

英語版 :https://www.amazon.com/dp/B0CWZL8XF3/

掲載:Japan Forward BOOK REVIEW | The Comfort Women Hoax: A Fake Memoir, North Korean Spies, and Hit Squads in the Academic Swamp

評者:ロバート・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所代表)

解題

『慰安婦のデマ』の書評を執筆した、ロバート・D・エルドリッヂは、1968年に米国ニュージャージー州で生まれ。1999年に神戸大学で日本政治外交史の博士号を取得した。彼は沖縄問題に関する著名な研究者であり、2003年には『沖縄問題の起源 ― 戦後日米関係における沖縄 1945 – 1952』(名古屋大学出版会)を執筆し、アジア・太平洋賞の特別賞を受賞した。その後、大阪大学の助教授として勤務し、沖縄の基地問題に取り組むために在日米海兵隊の外交政策部次長に就任した。

2015年2月、辺野古闘争がピークを迎えるなか、キャンプ・シュワブ前で抗議活動をしていたリーダー格の男性が刑事特別法違反の疑いで逮捕された。逮捕の正当性は、基地と道路の間に引かれていた黄色のラインを男性が越えたかどうかが争点となり、男性はラインを越えていないと主張し、沖縄のメディアは男性の逮捕を不当とする声を報道した。しかし基地のカメラには男性がラインを越えていた様子が記録されていた。エルドリッヂは、嘘と欺瞞がまかり通る沖縄の現状を放置することができず、男性の逮捕が不当でないことを明らかにするため、翌3月にYouTube番組のキャスターに映像を提供し、その動画が公開された。その動画は機密性の無いものだったが、米海兵隊は、沖縄の反米圧力に屈し、この行為が「非公式なルートで不適切に公表された」として、彼を解任した。

エルドリッヂは嘘と欺瞞が真実を凌駕するというこの経験から、この危機に対する警鐘を鳴らすために、この書評を執筆したと推測される。彼は、「知性があるのに、その知性を使って正しいことをする勇気を持たないことほど罪なことはない」と言っているが、社会や文化を進化させるための学問が、学者の良識と勇気が欠落したために、逆に社会の退化や廃退を招くという重大な警鐘を鳴らしたかったのであろう。さらには心ある学者やジャーナリストの奮起を促したかったのだろう。

書評 (JAPAN Forward 掲載の英文を翻訳)

翻訳:一二三朋子(国際歴史論戦研究所 上席研究員)

書籍:ジョン・マーク・ラムザイヤー著、李宇衍・柳錫春訳『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』(メディアウォッチ社 2024年)

評者:松木國俊(国際歴史論戦研究所 上席研究員)

解題

本書はハーバード大学教授ジョン・マーク・ラムザイヤーの著作であり、2024年1月3日、韓国の出版社メディアウォッチ社より韓国語で出版された。

タイトルは『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』となっており、韓国語への翻訳は落成台経済研究所研究員の李宇衍、元延世大学教授の柳錫春の二人が取り組んでいる。 

書評の中で言及されているとおり、2023年に日本語に翻訳され出版された『慰安婦性奴隷説をハーバード大学ラムザイヤー教授が完全論破』(ハート出版 2023年)とともに、慰安婦をめぐる画期的な研究書である。ラムザイヤー教授の完璧な論考が韓国語に翻訳・出版されたことは、韓国国内の世論にすこぶる大きな影響を与えると考えられる。

ラムザイヤー教授の日本語訳版『完全論破』の書評については、この「最近の国際歴史論戦研究の紹介」でジェイソン・モーガンの書評を紹介しているので、そちらを参照していただきたい。

 評者の松木は、当研究所の上席研究員であり、総合商社の駐在員として4年半韓国に滞在した経験がある。韓国の事情を熟知しており、著書には『ほんとうは「日韓併合」が韓国を救った』(ワック出版)『軍艦島・韓国に傷つけられた世界遺産(英語版書名Gunkanjima【Battleship Island】A World Heritage Site Soiled by Korea)』(ハート出版)など多数の韓国関連書籍がある。

書評の中で松木の述べている慰安婦問題に関する韓国国民の特異な感情的反応は、国際的に広く知らしめるべきであり、その点でこの書評は世界中の多くの人々に読まれることが期待される。

ジョン・マーク・ラムザイヤー著、李宇衍・柳錫春訳『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』(メディアウォッチ社 2024年)

ラムザイヤー論文集日韓同時出版の意義

国際歴史論戦研究所
上席研究員 松木國俊

ハーバード大学ラムザイヤー教授が、慰安婦性奴隷説を論破した論文の数々を一冊にまとめた本『慰安婦性奴隷説をハーバード大学ラムザイヤー教授が完全論破』(以下『完全論破』)(ハート出版 2023年)が、2023年12月13日に日本で刊行され、続いて2024年1月3日、韓国でも同様の書籍が出版された。タイトルは『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』(以下『慰安婦問題の真実』)である。

同書の構成及び内容は『完全論破』とほぼ同じであり、最後の章でラムザイヤー教授と前早稲田大学教授の有馬哲夫氏との共著論文「北朝鮮とのコネクション」が取り上げられている点のみが『完全論破』と異なっている。

 当該論文集の韓国語への翻訳は、落星台経済研究所研究員の李宇衍氏、及び前延世大学教授柳錫春氏の二人によって行われた。李宇衍氏は、2019年に韓国で刊行された『反日種族主義』の著者の一人であり、経済学博士として韓国経済の発展段階を客観的に分析し、日本による統治を極めて肯定的に評価している。2019年12月からは、毎週水曜日に日本大使館敷地前で「慰安婦像撤去、反日水曜集会中断、正義連(元韓国挺身隊問題対策協議会)解体」を要求するデモを単独で展開しており、行動派の人物でもある。

もう一人の翻訳者、柳錫春氏は社会学博士であり、「発展社会学」の見地から、日本統治時代を冷静かつ公平な視点で研究している。彼は、後に触れるように、延世大学の講義中に「日本統治時代の真実」を語ったために教職を追われ、反日勢力から告発されて現在係争中の身にある。

今回『慰安婦の真実』を韓国内で出版することが出来たのは、歴史の真実を広めるべく奮闘している、両翻訳者の熱意と使命感に負うところが大であり、慰安婦の嘘を論破したラムザイヤー論文の内容を、一般韓国人が知るところとなった意義は限りなく大きい。

本書の刊行は、慰安婦問題の根本的解決に向けた、最も画期的で重要なステップとなるだろう。

従来、韓国において慰安婦問題は、誰も異を唱えることのできない「聖域」とされており、本当は「売春婦」だった「慰安婦の実態」を口にすれば「慰安婦被害者を冒涜する売国奴」として糾弾され、場合によっては社会から抹殺された。

『反日種族主義』(未来社2019年)の編著者であるソウル大学名誉教授李栄薫氏は、2004年に「従軍慰安婦は売春業」「朝鮮総督府が強制的に慰安婦を動員したと、どの学者が主張しているのか」と真っ当な発言をしたところ、韓国挺身隊問題対策協議会から教授職辞任を要求され、同年9月には元慰安婦に対し韓国式の土下座を強要されている。

また世宗大学名誉教授の朴裕河氏は、2013年に上梓した『帝国の慰安婦』(プリワイパリ2013年)の中で「日本軍兵士と慰安婦は同志的関係にあった」と真実を書いたところ、元慰安婦側から「名誉棄損」で提訴された。地裁レベルでは敗訴を重ね、今年2024年4月に最高裁で無罪を勝ち取るまで実に10年を要している。

さらにラムザイヤー論文翻訳者の一人である柳錫春氏は、2019年9月延世大学で行った「発展社会学」の講義で、「農地の40%が日本に収奪された」「米を収奪された」「若者が強制連行されて奴隷労働をさせられた」「女性が挺身隊として連行され慰安婦にさせられた」という韓国では「常識」とされている話が、日本統治時代の実態とはかけ離れていることを論理的に説明。これに反発した正義連や元慰安婦から名誉棄損で訴えられ、本年2024年1月の一審判決では柳錫春氏が一部勝訴するも、原告、被告とも控訴し、現在裁判が継続中である。

2021年1月12日、ラムザイヤー教授の論文が産経新聞の英語ニュースサイトで取り上げられた際には、韓国全土が半狂乱の状態と化した。ハーバード大学の大学者に慰安婦問題の「嘘」を暴露されたのだから堪らない。日本のNHKにあたる韓国公共放送KBSは連日これを取り上げて激しく攻撃した。メディアに煽られた一般の韓国人も、英文で書かれた論文の内容など知らないまま、「青い目をした日本人」という感情的なレッテルを貼り、ありとあらゆる罵詈雑言を同氏に浴びせたのだ。

一体なぜこれほどまでに「学問の自由」が踏みにじられ、人権まで傷つけられるような理不尽な事態が韓国で発生するのだろうか。

もともと政権が変わるたびに歴史を作り変えて来た中国や韓国では、考証や検証などによって「真実の歴史」を明らかにすることは無理だと考えられている。彼らにとって「歴史」とは自己正当化の手段であり、自分たちに都合の良い「あるべき歴史」を作り上げて、これを押し通すことが何より重要となるのだ。その具体例をここに挙げてみよう。

元通産官僚でソウル大使館の参事官を務めた松本厚治氏によれば、1991年に設立された「日韓合同歴史教科書研究会」が韓国で開催したセミナーで、尹世哲ソウル大学教授は「被害国韓国の立場を尊重し、日本が事実にこだわる頑なな態度を捨てて教科書を書き直せば問題を解決できる」と語ったという。韓国を代表して日本人の前に現れる学者は大部分こんな考えの人たちだと松本氏は指摘している。

以上で明らかなように、韓国の社会では、学者が歴史的事実を証拠に基づいて論証しても、それが自分たちの考えと違えば決して納得しない。まして慰安婦問題は、韓国で既に「聖域」となっている。その真実に触れるだけでヒステリー状態となり、即土下座、謝罪させられ、裁判にかけられるという、まさに中世の魔女狩り的不条理がまかり通って来たのだ。

ではどうすればこのような状況を打ち破ることが出来るだろうか。それには真実を語るものが国境を越え、連携して行動する以外にないだろう。その意味からも、今回のラムザイヤー論文集である『完全論破』と『慰安婦の真実』の日韓同時発売は快挙であった。

これからも日米韓の慰安婦問題研究者が相互の絆を深めつつ、歴史の真実を、声をそろえて日韓両国民に、そして世界に向かって強く訴えるべきである。それでこそ韓国の「常識」が「非常識」となり、やがて彼らも慰安婦問題の真実を受け入れる日が来るに違いない。

もちろんそれはたやすい道ではないだろう。特に、反日感情の強い韓国でラムザイヤー論文を本にまとめて出版することは、身の危険を感じるほどの恐怖を伴ったはずだ。

だがここで葛藤を恐れては前に進むことは出来ない。慰安婦の実態を白日の下に晒した『慰安婦の真実』の出版は、慰安婦問題解決の突破口となる可能性を十分に秘めている。

本文の結びにあたり、本書の翻訳にあたった李宇衍氏、柳錫春氏、そして本書を発刊したメディアウォッチ社の勇気と決断に心より敬意を表する次第である。

評者:国際歴史論戦研究所顧問 阿羅健一

原著:Peter Harmsen, Bernhard Sindberg The Schindler of Nanjing(Casemate Publishers 2024)
  (ピーター・ハームセン『バーナード・シンドバーグ 南京のシンドラー』)

解題

この本はデンマーク人バーナード・シンドバーグの伝記で、バーナード・シンドバーグは支那事変が起きたとき上海におり、戦線が南京へ広がり、デンマークの会社が南京郊外に建設中のセメント工場に被害がおよぶ恐れが出たため、12月初旬に工場へ派遣され、翌年3月までその管理にあたった。

本の扉に記述されている要約によると、南京城内で大虐殺が行われていたときシンドバーグは工場の近くにいた1万人の避難民を受けいれ日本軍の迫害から守り、ホロコーストからユダヤ人を守ったシンドラーに匹敵するアジアでの人物であるという。

シンドバーグは無名に近い人物で、当時26歳の青年、格別のこともなく、伝記といってもほとんどが支那事変初期の出来事に割かれている。のちにアメリカへ帰化、太平洋戦争に従軍し、1983年にロスアンジェルスで死んでいる。

著者のピーター・ハームセンは、国立台湾大学で歴史を学び、中国語に堪能、東アジアで通信社の特派員として20年以上働いた。この間、ベストセラーとなった「上海、1937年」など支那事変初期に関する3部作を著している。その流れでこの本も書かれ、イギリスとアメリカにあるにあるケースメイト出版社から2024年に刊行されている。

評者の阿羅健一は1944年、宮城県生。東北大学卒業。現在「南京事件」問題では最高峰の研究者。少なくとも最高峰の1人としての研究者。それゆえに、この書評には重みがある。高校時代に伊藤正徳の『大海軍を想う』(文芸春秋新社 1956年)を読み、日本が軍隊を持たないことの悲哀を覚ったという。そして昭和史、戦後史を研究するようになるが、その過程で警察予備隊創設に際し、旧軍人を排した吉田茂に批判を抱くようになる。軍事史に関する著書として『「南京事件」日本人48人の証言』(小学館 2002年)、『【再検証】南京で本当は何が起こったのか』(徳間書店 2007年)、『日中戦争はドイツが仕組んだ-上海戦とドイツ軍事顧問団のナゾ』(小学館 2008年)、『秘録・日本国防軍クーデタ―計画』(講談社 2013年)などがある。

書評

棲霞山寺近辺で起こったこと

バーナード・シンドバーグという名は南京事件を研究している人には知られていた。

東京裁判に提出された「南京安全区档案 第六十号 棲霞山寺よりの覚書」のなかに、棲霞山寺は南京陥落前後から2万400人もの避難婦女子を抱え、1月4日から日本兵がやってきて24件以上の強姦が起き、殺人は3件、略奪も多数起き、1月20日ころも女を求めてくる日本兵がいたが、日本軍が交代して好転した、と記述されていた。この覚書を国際安全区委員会に提供したのがバーナード・シンドバーグである。

「南京安全区档案 第六十号」は法廷で読みあげられなかったものの、マギー牧師が証言台に立ったとき、昭和13(1938)年2月に棲霞山のセメント工場へ行くと、村長格から、工場には1万人の避難民がおり、日本兵がやってきて女を出すよう要求し、聞かないと暴行をしたと聞いたと証言し、そのほかデンマーク人から、ひとりの男が城内へ向かったところ城内で殺されていたと聞いた、と証言している。

 1990年代の時代に入ると、マギー牧師が棲霞山を視察したさいの記録が明らかになった。それによると、2月ころ棲霞山寺の避難民は1千人まで減ったが、代わりにセメント工場の避難民が1万人に増え、それらをシンドバーグが管理し、シンドバーグや村のひとが語るところによると、一帯ではそれまで700から800人の民間人が殺され、強姦は数えきれず、いまでも女性の要求は続き、殺人も起きているというものであった。

「南京安全区档案」と日本軍の動き

 こういったことに対してまずあげられたことは、「南京安全区档案」が南京にいた宣教師の宣伝工作による文書あり、事実を記述しているといえないということである。また、日本軍の行動を見ると、マギーの証言と棲霞山視察記録は事実に反しているということである。

南京は12月13日に陥落し、南京まで進んだ部隊は20日に新たな配置を命ぜられる。第16師団が南京を警備し、ほかの師団は蘇州や蕪湖などで警備につくと決まり、24日ころから移動が始まる。第16師団は主力が南京城に配置され、一部が抹陵関、堯化門、湯水鎮、棲霞山、新塘、丹陽など南京郊外に配置された。

棲霞山は、南京城の東北25キロにあり、南京城を朝に出発するなら夕方までには着く。南京と上海を結ぶ鉄道に棲霞山駅があり、そのまわりに棲霞山寺や大きいセメント工場がある。

第16師団の配置された郊外は、当初、南京防衛のため中国軍が配置され、やがて南京を目指した日本軍が進出し、空爆も行われ、中国軍は敗走する。日本軍はそれらを通って南京城へ向かい、一帯は後方地域となる。

第16師団は昭和12(1937)年9月から北支で戦い、中支に転戦し、南京まで攻め、南京で警備についた。郊外への配置では、本来なら警備と訓練であるが、将校たちが戦闘詳報と陣中日記の作成に追われたものの、兵たちはのんびりと休養を送ることになった。

食糧は南京陥落まで十分でなかったが、陥落後に輜重部隊が追及、12月下旬になると揚子江を通しても届きはじめる。正月を迎えることもあって、餅米、数の子、勝ち栗、鯛の缶詰などが届けられ、餅つきもいたるところで行われた。徴発のつづく部隊もあったが、12月28日には上海と南京間の鉄道が復旧し、おおむね平穏であった。

セメント工場に配置されたのは奈良の歩兵第38連隊第1大隊の第1中隊と第1機関銃隊で、その伍長である岡崎茂に対し東中野修道氏がインタビューした記録がある(東中野修道『南京『事件』研究の最前線 平成十七・十八年合併版』(展転社 2005年))。岡崎茂は軽機分隊の分隊長で、小隊の指揮をとったこともあるのだろう、兵隊の行動をよく把握しており、セメント工場での兵隊の生活もよくわかる。

それによれば、セメント工場のまわりに民家はない。工場は鉄条網が張りめぐらされ、自由に出入りできない。食糧は十分届いており、兵士の任務は兵器の手入れくらいで、兵隊は暇を持てあまし、トランプを使った賭け事が流行り、敗けこんだ兵隊が脱走する事件が起きた。それ以外、特段の乱れは起きていない。数キロ離れた棲霞山寺には第1大隊のほかの部隊が駐留していたのであろう。

第16師団は配置についたものの、早くも1月8日に転用が決まる。兵隊は南京を離れることを知らされるが、それ以上のことは皆目わからず、凱旋するものと考える兵も多かった。13日には指示が出て、準備が始まる。末端まで指示が届くのは数日かかるが、17日には師団司令部で送別会が行われる。日本軍が棲霞山にいたのはおよそ20日間で、最後の1週間は出発準備に追われたであろう。

出発にさいしては、南京から乗船して上海を目指す部隊と、鉄道を使って上海へ向かう部隊とに分かれる。湯水鎮で警備していた部隊は上海寄りの鎮江まで行軍し、そこから列車で上海へ向かった。棲霞山の部隊もそうであったろう。おおむね20日から28日にかけ南京を出発している。第16師団は上海からふたたび北支へ向かった。

このような日本軍の行動から、棲霞山寺では1月20日以降も女性を出せと日本兵が言ってきて、セメント工場では2月も続いているというが、そのころ第16師団はここにはいない。

本書の記述の問題

本書『バーナード・シンドバーグ 南京のシンドラー』によれば、棲霞山では多くの避難民が出て、避難民は棲霞山寺に避難し、急ごしらえの藁と竹からなる建物で生活し、雪や寒さをそこでしのいだ。やがて棲霞寺への避難民はセメント工場へ移る。

1月11日、シンドバーグは手紙に、工場は安全で従業員と家族100人がおり、工場のまわりに3千から4千人の難民がいるが、食糧も2月中旬までは持つ、と書いている。

1月23日にはアヒル20羽を城内の国際安全区委員へ持っていき、食糧は城内より豊富であった。シンドバーグは南京国際安全区委員会と関係なかったが、セメント工場から車に乗れば1時間半ほどで南京に着くことができ、工場と城内をたびたび行き来している。12月20日に初めて国際安全区委員会を訪れ、委員長のラーベのほか委員のスマイスやマギー牧師にも会っている。

また、日本兵が棲霞寺に入ることはなかった。セメント工場は貼紙がされ、日本兵が工場に来て女性を求めるが、デンマークの旗を出すと日本兵は去っていった。

このようなことが記述されており、シンドバーグは市民殺戮を目撃したわけでなく、東京裁判に提出された証拠からもほど遠い。

日本軍の仕業としてあげられていた事件は、もともとなかったものか、中国の敗残兵や不法者の仕業のものであろう。城内での出来事を多数記録した安全区档案が架空の出来事を記録しているように「南京安全区档案 第六十号」やマギー牧師の視察記も同じであろう。

ピーター・ハームセンは何を書こうとしたのだろうか

ピーター・ハームセンは何を書こうとしたのだろう。

日本の残虐性、不法行為を書こうとしたのか。

しかし、日本軍がそこにいたかどうか日本軍の資料と照らし合わせるまで考えが至らず、東京裁判や宣教師の記録を引きうつし、工場での被害をすべて日本軍によるものとするだけである。

戦場の悲惨さを書こうとしたのか。

一帯に避難民が出たのは両軍の軍事行動によるもので、ここでもピーター・ハームセンはそれらをすべて日本軍によるものとし、中国軍に目がいっていない。シンドバーグは避難民の救助にあたったが、救助にあたったというのなら、日本軍からではなく、中国の敗残兵と不法な中国人からであろう。

シンドバーグの勇敢さを書こうとしたのか。

シンドバーグは23歳のとき中国へ向かうが、船上で甲板長を殴り、別の乗組員をナイフで刺そうとし監禁される。3年後、セメント工場の管理を任せられるが、工場へ向かうさい日本軍の命令に従うように注意され、工場ではまわりの者をピストルで脅すなどして昭和13(1938)年3月には管理の役を辞めさせられている。勇敢というより乱暴者であった。

なぜシンドラーになぞらえられたのか

副題に「南京のシンドラー」とつけられている。

シンドラーはドイツの軍需工場経営者で、ユダヤ人従業員を雇っていた。ユダヤ人に同情し、収容所将校と親しい関係にあり、ノルマをあげる名目で収容所に入れられた1千200人のユダヤ人を救った。

「バーナード・シンドバーグ 南京のシンドラー」は、数百万の死をもたらしたドイツ国旗が南京では生命を助けるため使われていると記述しており、南京での避難民救助をドイツのユダヤ救出になぞらえているのだろう。

ヨーロッパには反ユダヤの歴史があり、第二次大戦中、ドイツはユダヤ迫害を行った。ヨーロッパに反ユダヤ主義があったとすれば、当時、東アジアには大アジア主義があった。日中が提携して欧米に対処するというもので、支那事変が起きて日中は戦ったが、日本は漢民族を抹殺しようとしたわけでなく、といって欧米を迫害したわけでもない。

シンドラーは成績証明書を改竄するような人物で、チェコでスパイ活動をし、闇商売で工場を大きくした。そのような人間性と通じるところからシンドバーグをシンドラーになぞらえているとしか思えない。

シンドラーになぞられた人は以前にもいた。平成8(1996)年、ドイツ人ラーベの日記が公開されたとき、ラーベは南京市民を救ったとしてシンドラーになぞらえられた。

ラーベは南京で貿易に従事し、南京陥落後、市民救済に動いた。しかし、南京で市民殺害が起きたわけでなく、ラーベが市民を殺害から救ったわけでもない。ラーベの行動は日本に敵対し、南京の復興を遅らせただけである。シンドラーになぞられる話ではなかった。

 結論

 それでは、なぜ、いま、このような本が刊行されるのか。

本書『バーナード・シンドバーグ 南京のシンドラー』は、これを根拠づける史料や資料という観点から見ても、何ら新しいものはなく、報復のため行われた戦争裁判の資料を並べただけで、新たな証拠に基づく研究が加えられたわけでない。敢ていうならば、歴史を正し、事実を広めるという姿勢が日本に見られないため、日本に関しては何を書いても許されるという風潮が世界に流れ、このような本が出版されたというよりほかはない。

評者 タダシ・ハマ

原著 著者 ハリー・レイ(原著)、杉原誠四郎(著者)日本人の原爆投下論はこのままでよいのか ―原爆投下をめぐる日米の初めての対話

解題

この書評の書『日本人の原爆投下論はこのままでよいのか-原爆投下をめぐる日米の初めての対話』(日新報道 2015年)は、アメリカ人ハリー・レイが日本人が一般に抱いている原爆投下論を批判したのに対して、日本人杉原誠四郎が、ハリー・レイの論考の章ごとに日本側に立って、章ごとに、反論を主として日本側の立場からのコメントを付したもので、それを原爆投下をめぐる日米の初めての対話として出版したものである。日本語版はハリー・レイの英文部分を、明星大学で博士号を取得し、同大学戦後教育史研究センターで占領下の教職追放の研究をした山本礼子が担当し、2015年、日新報道より出版された。英語版は、Bridging the Atomic Divide: Debating Japan-US Attitudes on Hiroshima and Nagsaki と題して、杉原の和文部分を、中国系オーストラリア人のノーマン・フーが担当して訳し、2019年、Lexington Books より出版された。

 共著者の1人、ハリー・レイは1931年、アメリカのネブラスカ州で生まれ、本書の英語版は見ずして2017年に没した。1971年ハワイ大学大学院を修了し、日本に長く滞在し日本の幾つもの大学で教鞭を執った。占領期教育改革の研究では占領下の教育改革に携わった日本側の50人、占領軍側の28人のインタビュー行い、占領教育史の研究で多大な貢献をなした親日家である。

 他方の著者杉原誠四郎は1941年広島市の生で、原爆投下寸前まで爆心地の近くに居住していた。1967年東京大学大学院教育学研究科修士課程を修了。博士課程に進まなかったのは、戦後の日本で自虐史観を振りまくことで多大な役割を果たした日本教職員組合(日教組)の講師団の団長を務めていた主任教授と対立したからといわれている。

 この書評の評であるタダシ・ハマは、この書評を2019年9月、「史実を世界に発信する会」より次のようにして発表した。

<書評>
『日本人の原爆投下論はこのままでよいのか
-原爆投下をめぐる日米の初めての対話』
ハリー・レイ & 杉原誠四郎
(レキシントンブックス 2019)

 ニュースレター No.231で、日本とアメリカとのあいだで長いあいだ避けられてきた極めて敏感な問題につき、率直にして忌憚のない対話をしたとして、この新しい本を紹介している。

 書評はタダシ・ハマによって書かれたもので、この書評に対しては、この本の著者の1人である杉原誠四郎教授によってさらにコメントが寄せられている。

 著者のハリー・レイはバランスの取れた対話となるように原爆について対話していきたいと述べており、そして占領期になされた東京裁判のような、戦勝国が敗戦国になす一方的なものであってはならない、と述べている。が、しかし、冒頭から、日本に向けて「人道に対する言い訳のできない罪を犯し続けた」と誹謗し、そしていろいろ述べるなかで、あたかも確定した歴史的事実であるかのように、韓国人女性を強制的に売春婦にしたとか、あるいはいわゆる「慰安婦」にしたとか、そして「南京事件」があったとか述べている。

 ハマの批判は、要するにこのような考え方でもっては「バランスの取れた会話」など成り立つはずはないということである。ハマはレイの偏った一方的な考え方について詳細に指摘していく。

 このハマの指摘に対して、著者の杉原は、ハマの見解を肯定しながらも、大統領ルーズベルトが原爆投下の最終的責任を背負うべきだと強調する。そしてこの杉原の指摘こそが、この重要な問題についての2人の対話を成り立たせることになっているのだ。杉原の指摘するところもよく読まれるべきだといえる。

 評者のハマは、チャールズ・A・リンドバーグの『孤高の鷲-リンドバーグ第二次大戦参戦』(Harcourt Brace Jovanovich, 1970)、グッドリッチ・TのSummer, 1945 (The Palm Press, 2018)などを新たに文献に加えて、日米戦にあって、アメリカ側にいかに多くの残虐行為があったかを示した。そのことによって、原爆投下につき、アメリカ側のハリー・レイの主張を否定し、アメリカ側に原爆投下の大義はなかったことを強調している。

 評者のハマは史実に即して言っているわけだから、ハマの言うことには誇張や虚構はない。その意味でこの書評は多くのアメリカ人に読んでもらうべきものだ。

 ハリー・レイの主張はアメリカで一般に広く言われているもので、原爆投下は終戦を早め、日米の犠牲者を少なくするためのものであり、事実、原爆投下によって多くの犠牲者が救われた、というものである。そしてポツダム宣言が出たとき、日本側が受諾しておれば原爆投下はなかったわけだから、原爆投下には日本側にそれ相当の責任があるというものである。

 後に言われることになる、原爆投下によって助かった犠牲者の数には誇張が入っているとしても、多くの人が助かったことは事実であり、そしてまたポツダム宣言が出たとき日本が直ちに受諾しておれば原爆投下はなかったことも事実である。

 が、これに対して、日本側を代表して杉原はどのように反論するか。要点としてはアメリカ側には、ポツダム宣言を出す以前の日本を降伏させ原爆投下をする必要をなくする機会は、ポツダム宣言を日本側が受諾する機会より遥かに何倍かの大きさであった、というものである。

 原爆投下以前に日本を降伏させるというこの政策を採ることを、時の大統領トルーマンのもとで難しくしたのは、前大統領ルーズベルトが日本に対して無条件降伏を強いていたからである。ルーズベルトは日米開戦に当たって、日本は「宣戦布告」なく突如、真珠湾を攻撃したと非難し、国民の戦意を煽り、日本への憎悪を掻き立てた。実際には、日米戦争は国民の見えないところでアメリカが日本を挑発して起こした戦争であり、「宣戦布告」の手交遅延も意図的にしたものではなく事務失態によるものであり、そのことを事実上知りながら、ルーズベルトは日本への敵意を煽り、無条件降伏を日本に強いた。そしてそれをして国民に強く支持させていたのである。その結果、日米戦争は日本に対して本土上陸作戦を実行しなければならないものになり、そのために日米戦争の勝敗がはっきりして以降も戦争を続けなければならなくなり、無駄な犠牲者が日米双方強いられていたのだ。

かくして、共著者の杉原は、ルーズベルトはアメリカ国民にも不必要に途方もなく犠牲者を強いたのであり、その限りでルーズベルトはアメリカ国民をも裏切っていたのだ。そのことをアメリカ人は知ってほしいと、杉原は追加して主張している。

この書評は、原爆投下をめぐり、アメリカ人にも広く読んでほしい書評である。

書評原文(史実を世界に発信する会Webサイトへのリンク)

著者:金柄憲

日本語版出版:文藝春秋社 (Amazonリンク

解題
 評者矢野は国際歴史論戦研究所上席研究員であり、陸上自衛隊陸将補を務めた後、岐阜女子大学、日本経済大学等で客員教授として教鞭を執る。専門分野である安全保障の観点から世界の国際紛争や日本国内に存在する歴史戦に対して日本の立場から数多くの提言を残すと共に、一般財団法人日本安全保障フォーラム会長を務めている。

 本書評は、『赤い水曜日』発行直後に日本国内での販売を後押しするためにAmazonのレビューとして記されたものである。

金柄憲氏は研究者として、また活動家として旧挺体協、現在の正義連が吹聴している「嘘」を暴き、言論と活動の現場で発信していることに対する孤軍奮闘のたたかいが多くの韓国の人々の共感を呼び、大きなムーブメントとなっていった。時に「慰安婦」強制連行を非難する集会では正義連を圧倒することもある。また、金柄憲氏は名古屋で行われた「表現の不自由展」や、フィラデルフィアの慰安婦像設置に併せて現地で韓国人の立場から韓国外でも反対運動を繰り広げた。

 金柄憲氏の主張と行動について、評者は日本人が真実の歴史に触れるばかりにとどまらず、韓国でなされている嘘の教育や対北政策に対する韓国国内における売国的行為に対するカウンターであるとした。

 また、評者はこれらが解決されることによって、日本と韓国の間に真の友好が芽生え、未来志向の発展と共に、共産主義勢力に対して自由主義陣営が勝ち抜くことの重要性を著した一冊であると評している。

日本語で出版されることによって保守的日本人の溜飲を下げるのみにとどめず、日本、韓国そして世界中の良識ある研究者や有識者が一致団結するきっかけとして、金所長が表明する憂慮に応えるためにも、さらに多くの言語での出版が望まれるところである。

当記事では、国際歴史論戦研究所 矢野義昭上席研究員によって書かれた書評を紹介します。