コンテンツへスキップ

ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実

書籍:ジョン・マーク・ラムザイヤー著、李宇衍・柳錫春訳『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』(メディアウォッチ社 2024年)

評者:松木國俊(国際歴史論戦研究所 上席研究員)

解題

本書はハーバード大学教授ジョン・マーク・ラムザイヤーの著作であり、2024年1月3日、韓国の出版社メディアウォッチ社より韓国語で出版された。

タイトルは『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』となっており、韓国語への翻訳は落成台経済研究所研究員の李宇衍、元延世大学教授の柳錫春の二人が取り組んでいる。 

書評の中で言及されているとおり、2023年に日本語に翻訳され出版された『慰安婦性奴隷説をハーバード大学ラムザイヤー教授が完全論破』(ハート出版 2023年)とともに、慰安婦をめぐる画期的な研究書である。ラムザイヤー教授の完璧な論考が韓国語に翻訳・出版されたことは、韓国国内の世論にすこぶる大きな影響を与えると考えられる。

ラムザイヤー教授の日本語訳版『完全論破』の書評については、この「最近の国際歴史論戦研究の紹介」でジェイソン・モーガンの書評を紹介しているので、そちらを参照していただきたい。

 評者の松木は、当研究所の上席研究員であり、総合商社の駐在員として4年半韓国に滞在した経験がある。韓国の事情を熟知しており、著書には『ほんとうは「日韓併合」が韓国を救った』(ワック出版)『軍艦島・韓国に傷つけられた世界遺産(英語版書名Gunkanjima【Battleship Island】A World Heritage Site Soiled by Korea)』(ハート出版)など多数の韓国関連書籍がある。

書評の中で松木の述べている慰安婦問題に関する韓国国民の特異な感情的反応は、国際的に広く知らしめるべきであり、その点でこの書評は世界中の多くの人々に読まれることが期待される。

ジョン・マーク・ラムザイヤー著、李宇衍・柳錫春訳『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』(メディアウォッチ社 2024年)

ラムザイヤー論文集日韓同時出版の意義

国際歴史論戦研究所
上席研究員 松木國俊

ハーバード大学ラムザイヤー教授が、慰安婦性奴隷説を論破した論文の数々を一冊にまとめた本『慰安婦性奴隷説をハーバード大学ラムザイヤー教授が完全論破』(以下『完全論破』)(ハート出版 2023年)が、2023年12月13日に日本で刊行され、続いて2024年1月3日、韓国でも同様の書籍が出版された。タイトルは『ハーバード大学教授が教えてくれる慰安婦問題の真実(副題:太平洋戦争における売春契約)』(以下『慰安婦問題の真実』)である。

同書の構成及び内容は『完全論破』とほぼ同じであり、最後の章でラムザイヤー教授と前早稲田大学教授の有馬哲夫氏との共著論文「北朝鮮とのコネクション」が取り上げられている点のみが『完全論破』と異なっている。

 当該論文集の韓国語への翻訳は、落星台経済研究所研究員の李宇衍氏、及び前延世大学教授柳錫春氏の二人によって行われた。李宇衍氏は、2019年に韓国で刊行された『反日種族主義』の著者の一人であり、経済学博士として韓国経済の発展段階を客観的に分析し、日本による統治を極めて肯定的に評価している。2019年12月からは、毎週水曜日に日本大使館敷地前で「慰安婦像撤去、反日水曜集会中断、正義連(元韓国挺身隊問題対策協議会)解体」を要求するデモを単独で展開しており、行動派の人物でもある。

もう一人の翻訳者、柳錫春氏は社会学博士であり、「発展社会学」の見地から、日本統治時代を冷静かつ公平な視点で研究している。彼は、後に触れるように、延世大学の講義中に「日本統治時代の真実」を語ったために教職を追われ、反日勢力から告発されて現在係争中の身にある。

今回『慰安婦の真実』を韓国内で出版することが出来たのは、歴史の真実を広めるべく奮闘している、両翻訳者の熱意と使命感に負うところが大であり、慰安婦の嘘を論破したラムザイヤー論文の内容を、一般韓国人が知るところとなった意義は限りなく大きい。

本書の刊行は、慰安婦問題の根本的解決に向けた、最も画期的で重要なステップとなるだろう。

従来、韓国において慰安婦問題は、誰も異を唱えることのできない「聖域」とされており、本当は「売春婦」だった「慰安婦の実態」を口にすれば「慰安婦被害者を冒涜する売国奴」として糾弾され、場合によっては社会から抹殺された。

『反日種族主義』(未来社2019年)の編著者であるソウル大学名誉教授李栄薫氏は、2004年に「従軍慰安婦は売春業」「朝鮮総督府が強制的に慰安婦を動員したと、どの学者が主張しているのか」と真っ当な発言をしたところ、韓国挺身隊問題対策協議会から教授職辞任を要求され、同年9月には元慰安婦に対し韓国式の土下座を強要されている。

また世宗大学名誉教授の朴裕河氏は、2013年に上梓した『帝国の慰安婦』(プリワイパリ2013年)の中で「日本軍兵士と慰安婦は同志的関係にあった」と真実を書いたところ、元慰安婦側から「名誉棄損」で提訴された。地裁レベルでは敗訴を重ね、今年2024年4月に最高裁で無罪を勝ち取るまで実に10年を要している。

さらにラムザイヤー論文翻訳者の一人である柳錫春氏は、2019年9月延世大学で行った「発展社会学」の講義で、「農地の40%が日本に収奪された」「米を収奪された」「若者が強制連行されて奴隷労働をさせられた」「女性が挺身隊として連行され慰安婦にさせられた」という韓国では「常識」とされている話が、日本統治時代の実態とはかけ離れていることを論理的に説明。これに反発した正義連や元慰安婦から名誉棄損で訴えられ、本年2024年1月の一審判決では柳錫春氏が一部勝訴するも、原告、被告とも控訴し、現在裁判が継続中である。

2021年1月12日、ラムザイヤー教授の論文が産経新聞の英語ニュースサイトで取り上げられた際には、韓国全土が半狂乱の状態と化した。ハーバード大学の大学者に慰安婦問題の「嘘」を暴露されたのだから堪らない。日本のNHKにあたる韓国公共放送KBSは連日これを取り上げて激しく攻撃した。メディアに煽られた一般の韓国人も、英文で書かれた論文の内容など知らないまま、「青い目をした日本人」という感情的なレッテルを貼り、ありとあらゆる罵詈雑言を同氏に浴びせたのだ。

一体なぜこれほどまでに「学問の自由」が踏みにじられ、人権まで傷つけられるような理不尽な事態が韓国で発生するのだろうか。

もともと政権が変わるたびに歴史を作り変えて来た中国や韓国では、考証や検証などによって「真実の歴史」を明らかにすることは無理だと考えられている。彼らにとって「歴史」とは自己正当化の手段であり、自分たちに都合の良い「あるべき歴史」を作り上げて、これを押し通すことが何より重要となるのだ。その具体例をここに挙げてみよう。

元通産官僚でソウル大使館の参事官を務めた松本厚治氏によれば、1991年に設立された「日韓合同歴史教科書研究会」が韓国で開催したセミナーで、尹世哲ソウル大学教授は「被害国韓国の立場を尊重し、日本が事実にこだわる頑なな態度を捨てて教科書を書き直せば問題を解決できる」と語ったという。韓国を代表して日本人の前に現れる学者は大部分こんな考えの人たちだと松本氏は指摘している。

以上で明らかなように、韓国の社会では、学者が歴史的事実を証拠に基づいて論証しても、それが自分たちの考えと違えば決して納得しない。まして慰安婦問題は、韓国で既に「聖域」となっている。その真実に触れるだけでヒステリー状態となり、即土下座、謝罪させられ、裁判にかけられるという、まさに中世の魔女狩り的不条理がまかり通って来たのだ。

ではどうすればこのような状況を打ち破ることが出来るだろうか。それには真実を語るものが国境を越え、連携して行動する以外にないだろう。その意味からも、今回のラムザイヤー論文集である『完全論破』と『慰安婦の真実』の日韓同時発売は快挙であった。

これからも日米韓の慰安婦問題研究者が相互の絆を深めつつ、歴史の真実を、声をそろえて日韓両国民に、そして世界に向かって強く訴えるべきである。それでこそ韓国の「常識」が「非常識」となり、やがて彼らも慰安婦問題の真実を受け入れる日が来るに違いない。

もちろんそれはたやすい道ではないだろう。特に、反日感情の強い韓国でラムザイヤー論文を本にまとめて出版することは、身の危険を感じるほどの恐怖を伴ったはずだ。

だがここで葛藤を恐れては前に進むことは出来ない。慰安婦の実態を白日の下に晒した『慰安婦の真実』の出版は、慰安婦問題解決の突破口となる可能性を十分に秘めている。

本文の結びにあたり、本書の翻訳にあたった李宇衍氏、柳錫春氏、そして本書を発刊したメディアウォッチ社の勇気と決断に心より敬意を表する次第である。