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記者会見
『赤い水曜日』発刊と韓国の慰安婦運動の実態と新たな展開の報告

[日時] 2022年(令和4年)11月17日(木)午前11時

[場所] プレスセンタービル9階 大会議室 (東京都千代田区内幸町2丁目2-1)

[会見者] 金 柄憲 (キム・ビョンホン)

プロフィール:成均館大学校漢文学科の修士および博士を修了。韓国の歴史学者、大学講師。韓国国史教科書研究所所長、慰安婦法廃止国民運動代表、国史問題研究所理事を務めている。2019年度から、在大韓民国日本国大使館前の少女像撤去を求める集会を開いており、2022年1月には経済学者である李宇衍氏などと慰安婦詐欺清算連帯を結成。近著の「赤い水曜日、30年間の慰安婦歪曲」日本語訳は文藝春秋から発売中。

令和4年11月17日

金 柄憲

声明文
『赤い水曜日』発刊と韓国の慰安婦運動の実態と新たな展開の報告

こんにちは。私は韓国から来た国史教科書研究所所長であり『赤い水曜日、30年間の慰安婦嘘』の著者、金 柄憲(キム·ビョンホン)です。 今日私がこの場で皆さんに私の心血を注いだこの本を紹介できることにこの上ない栄光を感じております。

本書は2021年8月、韓国で発刊された『赤い水曜日』の日本語版で太平洋戦争時の朝鮮の時代背景と挺身隊問題対策協議会が発行した慰安婦証言集とを分析し、挺対協(現「正義記憶連帯」)を中心に展開されてきた慰安婦問題が如何に倭曲·捏造されてきたかを追跡し整理した本です。

ご覧のとおりこの本は380ページにもなります。 実際は、韓日間の慰安婦問題の実状を理解するのにこんなにも多くの分量は必要ではありません。 「慰安婦は所定の代価を受け取って性的サービスを提供した性労働者であり、当時慰安婦たちは大部分貧困の故に親によって売られたり、家族の生計のために苦労の道を選ばざるをえなかった、という歴史的事実を認めればそれで済むことなのです。 にもかかわらず、こんなにも分量が多い理由は、正義記憶連帯をはじめ慰安婦運動市民団体が30年間行ってきた嘘をひとつひとつ明白にしなければならなかったからです。

慰安婦問題は、日本の吉田清二という人物の虚偽証言から始まり、韓国の正義記憶連帯がこれを拡大再生産し、国連をはじめとする国際社会が公信力を付与した国際詐欺事件です。 もし、これらの人物と団体、そして国際機関が慰安婦問題についてただ真実だけを発信してきたのなら、この本は世の中に出る必要はなかったはずです。

この本は、偽の慰安婦 李 容洙 (イ·ヨンス)の嘘を追跡することから始まります。 現在慰安婦運動の代表走者である李氏は1990年代初期証言で「ある男がくれた赤いワンピースと革靴に魅せられて、気軽について行った」と話しています。 そして「大邱から私たちを台湾まで連れて行った男が慰安所の主人だった。 私たちは彼をオヤジと呼んだ」と言いました。 ところがある時から、「寝ていたところ日本軍に連れて行かれた」、「神風特攻隊に連れて行かれて電気拷問を受けた」という風に完全に変わります。 問題は、初期証言にはなかった李氏の証言に日本軍が登場したことによって、貧困故の問題が日本軍の戦争犯罪に変質したという事です。

初期の李 容洙氏の証言どおりならば、李氏は日本軍慰安婦ではないうえに「慰安婦被害者法」で定義された「日本軍慰安婦被害者」にもなれません。 なぜなら「慰安婦被害者法」で定義された「日本軍慰安婦被害者」の前提条件が「日本軍による強制動員」なのですが、李 氏は日本軍によって動員されてはいないからです。 これは友人らと金を稼ぐために自ら鴨緑江を渡って中国に行ったと証言した吉 元玉(キル·ウォノク)氏も同様です。

この2人の女性に関して、私たちの団体では2021年2月に、「彼女らが果たして日本軍によって強制動員された被害者であるかどうか」を調査してほしいという趣旨の監査を請求したことがあります。しかし結果は棄却でした。 監査院では「李 容洙氏と吉 元玉氏が日本軍に強制動員されたのは事実」とし、その根拠として監査院は1993年の河野談話と2021年の1月8日付の慰安婦損害賠償判決文を提示したのです。 しかし、河野談話は日本軍の慰安婦強制動員を認めてなく、またこの二人の名前さえ言及しませんでした。

また、監査院は別の証拠としての2021年1月8日慰安婦損害賠償請求訴訟判決文に慰安婦動員と関連して日本軍が①女性を暴行、脅迫、拉致して強制動員する方法、②地域の有志、公務員、学校などを通じて募集する方法、③「就職させてあげる、たくさんお金が稼げる」と欺いて募集する方法、④募集業者に委託する方法、⑤ 勤労挺身隊、供出制度を通じた動員方法などを利用したとしましたが、これらすべては歴史的事実ではありません。

特に、判決文には「慰安婦が逃走する場合、日本軍が直接追撃して逃走した「慰安婦」を再び慰安所に連れてきて射殺したりしたとありますが、これもやはり証拠のない嘘です。 監査院だけでなく司法府までが嘘をついたのです。

次に大きく取り上げたのは、韓国の小中高の学校の教科書に記載されている慰安婦問題です。歪曲捏造された慰安婦に関する情報が学校の教科書を通じて毒キノコのように広がっているからです。 これは日本も同じことでしょう。 韓国の小学校から高校に至るすべての生徒が教科書を通じて今も尚、歪曲·捏造された慰安婦の話を学んでおり、5~7年周期で教科書が改編されるたびにその分量もさらにもっと増えているのが実情です。

このように教科書に収録された慰安婦記述は、次の2つの点で大きな問題を抱えています。一つは学生たちに真実の歴史ではなく偽りの歴史を教えるという点です。 教科書に収録されている慰安婦に関する記述はすべて嘘です。 もう一つは、まだ肉体的·精神的に未成熟な幼い生徒たちに成人の領域である売春婦関連テーマを教えるという点です。 これは、子供たちに対する情緒的虐待であり、人権侵害です。

これまで私が申し上げたことについて多少疑問に感じる方もいるかと思います。 しかし、私は歴史研究者として、慰安婦問題が最初から最後まで嘘であることを知った以上、黙っているわけにはいきませんでした。 また、歪曲された情報をもとに制作された少女慰安婦像が、国内だけでなく外国にまで建てられている現実を傍観することはできません。

慰安婦問題に対するこの果てしない嘘は、韓国と日本に限ったことではありません。西欧の有名学者たちでさえ慰安婦の実体をまともに知ることもできず「戦時性暴力被害者」と躊躇なく言います。 しかし、残念ながらこのような主張をする学者のほとんどは当時の朝鮮社会に対する理解が不足しているうえに慰安婦たちが残した証言集さえも読んでいない人たちです。

慰安婦問題についての嘘は、今や国連という国際機関や有名学者の主張に支えられ、世界的な嘘に飛び火しました。 しかし、30年間続いてきた慰安婦問題は、正義記憶連帯が慰安婦経歴のあるかわいそうな老人たちを前面に出して国民を欺き、世界の人々を欺いた国際詐欺だという事実は明らかです。 『赤い水曜日』は、これらの慰安婦詐欺を終わらせるために発行されました。

韓国語版に続く日本語版発刊をきっかけに30年間騙されてきた韓国と日本の多くの国民が慰安婦問題に対する正しい認識を持つようになることを心から願ってます。

私たちが慰安婦問題に対する歪曲と捏造を取り除き真実に向き合う時こそ、韓国と日本は葛藤と対立から抜け出し、和解と協力の未来に進むことができると確信しています。

ありがとうございました。

以上

記者会見『赤い水曜日』発刊と韓国の慰安婦運動の実態と新たな展開の報告

日韓情報(ゆんばん)赤い水曜日記者会見プレスセンターから

令和4年11月16日開催「 慰安婦問題を巡る 日韓合同シンポジウム 」は盛会に終えることができました。(主催:国際歴史論戦研究所
以下に関連資料を掲載します。

◆ 配布資料
https://i-rich.org/wp-content/uploads/2022/11/2022.11.16_Symposium.pdf

◆ プログラム
https://i-rich.org/wp-content/uploads/2022/11/2022.11.16_program.pdf

◆ シンポジウムで上映した動画
柳 錫春(延世大学元教授) ビデオ出演
「自由民主主義を守る日本国民に捧げるメッセージ」

J・マーク・ラムザイヤー(ハーバード大学ロースクール三菱日本法研究教授)
ビデオメッセージ

◆ シンポジウム動画

【生放送】慰安婦問題を巡る日韓シンポジウム 主催: iRICH 国際歴史論戦研究所

日韓情報(ゆんばん)慰安婦問題シンポジウム会場ライブ配信

◆ シンポジウム写真

韓国国史教科書研究所 所長 金柄憲 先生
ジャーナリスト 朴舜証 先生
参議院議員 自民党 有村治子 先生
歴史認識問題研究会 会長 西岡力 先生
左)ジャーナリスト 大高未貴 先生 、右)国際歴史論戦研究所上席研究員 茂木弘道
左) 通訳 宮本富士子 様

◆ 報道

産経 2022/11/17
「真実が理解されれば『良心的日本人』は立つ瀬なくなる」慰安婦像の撤去求める韓国人研究者
https://www.sankei.com/article/20221117-3JQH3COHOFNYNEKERCZW5OH5AE/

JAPAN Forward   November 14, 2022
日韓関係を悪化させる韓国の「歴史歪曲問題」By Kenji Yoshida
https://japan-forward.com/japanese/114935/
INTERVIEW | Kim Byungheon on How History Distortion is Wrecking Japan-South Korea Relations
https://japan-forward.com/kim-byungheon-on-how-history-distortion-is-wrecking-japan-south-korea-relations/

「 慰安婦問題を巡る 日韓合同シンポジウム 」
【日時】
令和4年11月16日(水) 開場12時半 開会13時 閉会16時
【場所】
文京シビック スカイホール
( 東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター26階 )
【アクセス】
東京メトロ丸ノ内線・南北線 後楽園駅直結 / 都営地下鉄三田線・大江戸線 春日駅直結
【プログラム】
<第一部> 講演
「韓国の小中高教科書内の慰安婦記述に対する諸問題」
金柄憲(キム・ビョンホン)韓国国史教科書研究所所長
「「少女像守り」 反日行動の正体」
朴舜証(パク・スンジョン)ジャーナリスト
「自由民主主義を守る日本国民に捧げるメッセージ」ビデオ出演
柳錫春(リュウ・ソクチュン)延世大学元教授
<第二部> パネル ディスカッション
「慰安婦問題の解決を目指す日韓連携のあり方」
パネリスト: 金柄憲、朴舜鍾、大高未貴、茂木弘道
コーディネーター: 松木 國俊
【参加費】 1,000円
【主催 問合せ】 一般社団法人 国際歴史論戦研究所 i-rich.org
Mail: info@i-rich.org
Tel: 03-6912-0047
Fax:03-6912-0048

登壇者プロフィール

◆ 金 柄憲(キム・ビョンホン)
成均館大学校漢文学科の修士および博士を修了。韓国の歴史学者、大学講師。韓国国史教科書研究所所長、慰安婦法廃止国民運動代表、国史問題研究所理事を務めている。2019年度から、在大韓民国日本国大使館前の少女像撤去を求める集会を開いており、2022年1月には経済学者である李宇衍氏などと慰安婦詐欺清算連帯を結成。近著の「赤い水曜日、30年間の慰安婦歪曲」の日本語版は文藝春秋より発売中。

◆ 朴 舜鍾(パク・スンジョン)
1989年韓国忠清北道生まれ。2016年韓国外国語大学日本語科卒業(文学士・経済学士)後、サラリーマンとして社会生活を始めた。2019年11月から2022年 6月まで「ペンアンドマイク」外交・政治・国際チーム。現在はフリーのジャーナリストとして活躍中。月刊正論2022年4月号に「韓国の歴史教科書を信用しない理由」を寄稿。

◆ 柳 錫春(リュウ・ソクチュン)
1955年生まれ、慶尚北道 安東出身。延世大学社会学部卒業。米国イリノイ大学社会学博士修了。1987年から2020年まで延世大学教授。2019年延世大学での講義中、「慰安婦は売春の一種だ」発言で訴えられ刑事訴訟1審中。

◆ 大高 未貴
フェリス女学院大学卒業。世界100カ国以上を訪問。チベットのダライラマ14世、台湾の李登輝元総統、世界ウイグル会議総裁ラビア・カーディル女史、パレスチナガザ地区ではPLOの故アラファト議長、サウジアラビアのスルタン・ビン・サルマン王子などにインタビューする。またアフガン問題ではタリバン全盛の98年にカブール単独潜入し、西側諸国ではじめてアフガン崩壊の予兆を報道。『日本をウクライナにさせない 中露の静かなる侵略に気付かない日本』WAC出版 『習近平のジェノサイド 捏造メディアが報じない真実』WAC出版『『日本を貶める「反日謝罪男と捏造メディア」の正体』WAC出版 など著書多数。TV DHCニュース虎の門 産経ワールドビューなどレギュラー出演。

◆ 茂木 弘道
1941年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、富士電機、国際羊毛事務局を経て、90年に世界出版を設立。「史実を世界に発信する会」会長。「近代史検証会」代表。著書・共著に『大東亜戦争 日本は「勝利の方程式」を持っていた!』(ハート出版)、『日米戦争を起こしたのは誰か』(勉誠出版)など。国際歴史論戦研究所上席研究員。

◆ 松木 國俊
1950年熊本県生まれ。1973年慶応義塾大学法学部卒業。1980年~84年豊田通商ソウル事務所勤務。現在、朝鮮近現代史研究所所長。新しい歴史教科書をつくる会副会長、国際歴史論戦研究所上席研究員。著書に『ほんとうは「日韓併合」が韓国を救った!』(WAC出版)ほか多数。監修に百田尚樹著『今こそ韓国に謝ろう』(日本語版及び韓国語版)など。国際歴史論戦研究所上席研究員。

令和4年(2022年)11月

    上席研究員

茂木弘道


1.ウクライナ戦争はグローバリズムと民族主義の戦い?

 藤原正彦氏は、『日本人の真価』(文春新書 2020年)の中で、「ロシアによるウクライナ侵攻ほどあからさまな侵略が、21世紀ヨーロッパで行われるとは信じ難いことである。」と述べているように、まさに歴史が1世紀後退したのではないかと多くの人は驚いている。

 ところが、これはグローバリズムに対抗する民族主義の戦いである、という見方もあるようである。DS(ディープ・ステイト)主導によるアメリカのグローバリズムにロシアの民族主義が対抗しているということのようであるが、では肝心の「ウクライナ」はどこにくるのかという疑問がわく。アメリカの支援を受けたグローバリズムの代弁者とでもいうのだろうか?

ウクライナ人をなめたとんでもない考えである。圧倒的な軍事力を誇るロシアの全面攻撃に敢然と真正面から戦っているウクライナはアメリカのために戦っているとでもいうのだろうか。アメリカのために命を懸けるバカとでも思ってるのか、と言いたくなる。確かにアメリカをはじめとした西側諸国の厖大な武器支援あればこそ20万ロシア軍の中心的な戦力を撃退し、首府キーウを守り、東部、南部でもロシア軍に打撃を与え、失地回復を進めることができている。ロシアの千を超す戦車部隊の惨めな敗走など誰が予想しただろうか。軍事援助などいくらあっても、国を愛し、国のために命を懸ける、国民の戦う決意なくしてこれほどの戦闘は絶対に不可能である。アフガンを見ろと言いたい。武器支援に加えて米軍自体も加わっていたにもかかわらずあのざまである。

この戦いが、民族主義ウクライナの英雄的な戦いであるとすると、ロシアは何であったのか?ロシアはウクライナ侵略の口実に、「ネオナチの脅威」とかNATO加盟問題だとか、とても全面侵略の理由になりえないことを表に出しているが、本当の理由は「大ロシア主義」、大ロシアの実現を目的とした全面侵略なのである。

開戦当初の2月26日国営ノーボスチ通信は「ロシアの新たな世界の到来」と題する記事で、次のように述べている。

“目的は大ロシア帝国の復活でした。≪ロシアはロシア世界、ロシア国民、すなわち大ロシア人(ロシア)、白ロシア人(ベラルーシ)、小ロシア人(ウクライナ)を結集させ、歴史的完全性を回復している。もしわれわれがこれを放棄し、一時的な分離が固定化するのを許してしまったら、ロシアの土地の崩壊を許してしまったことによって祖先の記憶を裏切るのみならず、子孫からも呪われるだろう≫との使命感が突き動かしていたのです。”

ロシア民族主義的使命感こそがウクライナ侵略の基になっているということになる。しかし、この民族主義は主権国家である小ロシアの主権、ウクライナ人の意思を全く無視して一方的に自己の民族主義を強要している。そのために武力行使をためらわない。きわめて悪質で、危険な考え方である。

「大ロシア主義」という「グローバリズム」は今や、日本の北海道までも、アイヌ問題を理由にロシアに領有権があることまで主張しだしているのである。(露下院副議長が「北海道の全権はロシアにある」と公言している。『産経新聞』2020年6月11日)

ヨラム・ハゾニーが『ナショナリズムの美徳』(中野剛志/施光恒訳)(東洋経済 2021年)でいうように、ナチは民族主義にとどまらず、「帝国主義化し、自己の主義、文化を他国に強要するグローバリズム」となっていたのである。

大ロシア主義もこれと同じく、民族主義の衣をまとったグローバリズムといわなければならない。すなわち、この戦いはロシア民族主義ではなく、「大ロシア主義グローバリズム」対「ウクライナ民族主義」の戦いととらえるのがより正しいということになる。

「ネオナチ」の脅威は完全なる嘘

 ロシアが開戦理由として最前面に押し出していたのが、親ロシア派に対抗するアゾフ大隊などのネオナチの脅威である。

 ソ連時代の1932年から33年にかけてウクライナは大飢饉に襲われた。330万人から数百万人の餓死者を出した惨事であるが、天候理由もさることながら、共産党の独善的、強権主義がより大きな理由であったことは有名な映画「赤い闇 スターリンの冷たい大地」にも描かれている。このためウクライナ民族主義者、ウクライナ国民の間に強烈な反ソ感情が生まれたことは必然のことである。したがってドイツ軍がウクライナに侵攻してきた時には多くのウクライナ人がドイツ軍に協力した。そのような背景の下、アゾフ大隊のような人たちが生まれたことも自然なことと言えるだろう。しかし、現在のウクライナでは、アゾフ大隊の違法なロシア系住民への攻撃が公認されているわけでもなければ、ウクライナ政府が反ロシア報復主義政策をとっているわけでもない。それどころか、ウクライナ東部にロシアは8000人規模のワグネル軍団の傭兵部隊を2014年から投入しているのだ。とっくに侵略行為を行っているのである。ネオナチをうんぬんする資格など全くない。いわんや、ウクライナ全面侵略の口実などになるはずもない。

 また、もう一つの開戦理由として、ロシアはNATOの脅威を挙げている。ウクライナが、NATO加盟をあきらめないことをロシアの脅威というのである。

 NATOは拡大して来たし、今でも拡大しつつある。しかし、NATOはいまだかつて、主権国家に対して、侵略戦争を仕掛けたことはない。NATO の拡大理由は、ロシアという侵略的大国の脅威を逃れるために加入国が拡大したのであって、一か国もNATOに加入して、ロシアを侵略しようなどと考えている国はない。今回のロシアの20世紀的な暴挙を見て、伝統的に中立政策をとってきたスエーデン、フィンランドなどがNATO加盟を正式に申請したのだからロシアの挙げた開戦理由は逆の効果を生み出しているのである。

 すなわち、ロシアの挙げるネオナチに関わる開戦理由もNATOに関わる開戦理由も、ロシアの一方的な全面侵略の理由には全くなりえないということである。

真珠湾攻撃とロシアの全面侵攻に共通性があるという歴史認識をめぐる誤った主張

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、3月16日に行われた米連邦議会のオンライン演説で、次のようなことを述べた。

真珠湾攻撃を思い出してほしい。1941年12月7日、あのおぞましい朝のことを。
あなた方の国の空が攻撃してくる戦闘機で黒く染まった時のことを。

 これはとんでもない、間違った認識である。しかし、大変残念なことであるが、真珠湾攻撃が日本の一方的な侵略行為である、という見方が、世界でほぼ共有されているというのが現実である。しかしながら、元ニューヨーク・タイムズの日本支社長のヘンリー・ストークス氏が、『英国人記者が見た 連合国戦勝史観の虚妄』(藤田裕行訳)(祥伝社 2013年)で述べているように、日本侵略者論は全くの「虚妄」である。

 まず確認しておかなければならないことは、ロシアのウクライナ侵略は、自国の存在が危機的な状況下にあったわけではないにもかかわらず、小国であるウクライナに全面侵攻したという事実である。しかも、「核」の脅しを公言するという無法ぶりである。

確かに真珠湾攻撃は先制攻撃には違いないが、ロシアのウクライナ侵攻の場合とは全く異なり、日本は正真正銘の国家存亡の危機に直面していたのである。

アメリカは1939年7月7月に一方的に日米通商条約の破棄を宣言した。これはマンチェスター・ガーディアン紙(1939年7月28日号)が書いているように「アメリカ史上類例を見ない、重大な意味を持つ行為」であり、事実上「準宣戦布告」と言えるものであった。半年後からアメリカは日本に対して自由に「輸出制限」ができるようになり、屑鉄、合金、精鋼、鉄鋼製品、機械類などの輸出制限を開始し、ついに1941年8月には石油の全面禁輸を行うに至ったのである。石油の90%を輸入に頼っていた日本は、オランダもアメリカに追随して輸出制限を行うことになったので、石油の入手先がなくなり、近代国家として正に存続の危機に立たされることになったのである。ソ連が、逆に石油を欧米に対する戦略物資としてその輸出を脅しに使っているのと正反対の状況であったのだ。

 アメリカの国務長官ケロッグが、1928年12月8日、自身が提案したパリ不戦条約の批准のための議会討論で、議員の質問に答えて、「経済封鎖は戦争行為である。」(It’s an act of war,absolutely!)と述べているように、経済封鎖は戦争行為なのである。すなわち、経済封鎖という戦争行為を日本に対して先に行ったのは、アメリカに他ならないのである。

 これに加えて、アメリカは長距離爆撃機よる日本本土爆撃計画(JB355)を作成し、1941年の7月23日にはルーズベルト大統領が、これを承認するサインをしている。(サインをした文献は公文書館に公開されている。)真珠湾攻撃の4か月半前のことである。

 日本政府は、アメリカとの衝突回避のために交渉を続けていたが、それに対する実質的には最後通告であるハル・ノートが11月26日提出された。それまでの交渉の成果をほとんど無にする内容であった。開戦に賛成した共和党のリーダー・ハミルトン・フィッシュは、戦後、このハル・ノートが議会の誰にも知らされていなかったことを徹底批判して、これを知らずに自分が開戦に賛成したことは誤りだったと述べている。

 すでに経済封鎖により、実質戦争行為を行っているアメリカ、それに対して和解の道を探っていた日本にとって、和解の見込みがなくなったということは、自衛手段を取る以外に道がなくなったことを意味する。日本は自衛手段を行使する権利を持っている。そして、自衛手段の行使に踏み切った。それが真珠湾攻撃である。

 ロシアのウクライナ侵略は、自国の存亡が脅かされているわけでもなく、自衛権の行使でもない。どこにも似ているところなど存在していないことをゼレンスキー大統領をはじめ、世界中の人々が知るべきである。大変残念なことであるが、真珠湾攻撃が日本の一方的な侵略行為であるという見方が、今なお世界でほぼ共有されているというのが現実である。正さるべき認識である。

令和4年(2022年)10月

    上席研究員

一二三朋子

1 日本語教育の概況

海外には2018年現在約400万人の日本語学習者がいる(国際交流基金 2020)。1988年以来、30年で30倍以上の増加である。また、日本国内にも16万人の日本語学習者がおり、やはり30年で約3倍の増加となっている(文化庁 2021)。

国内における日本語教育の動向は、時代の変遷に伴って変化してきた。1970年代までは、日本語を学習するのは、日本研究者やビジネスマン、留学生などごく少数の外国人だけであった。しかし、日本の高度経済成長、日中国交正常化(1972)、難民条約締結(1981)、留学生10万人計画(1983)、「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)」改正(1990)、外国人技能実習制度(1993)、留学生30万人計画(2008)、EPA(経済連携協定)(2008)、「特定技能」(2019)など、その時々の政治・経済・外交の影響を受けながら、日本語学習者は増え続け、かつ多様化してきた。しかし、日本語教育はそれ自体の明確な理念のないまま外的要因に翻弄され、目先の問題に追われるだけの場当たり的な意味での悪戦苦闘の歴史であり、長期的な戦略がなかった。

2 国家的戦略としての視点の欠如

日本語学習者が増え、日本語教育が活発化することは、日本語や日本文化を世界に広め、親日家・知日家を増やす絶好の機会である。しかし、日本語学習者が増えたからといって、日本への理解が進み、親日家・知日家が増えているようには思われない。日本語学習者が増えながら、相変わらず、近隣諸国の反日活動は収まらず、日本に対する誤解・偏見は蔓延し、不当な批判や誹謗中傷に晒されている。日本への正しい理解が深まらないのは、国家的戦略のないまま日本語教育を放置してきたことに大きな原因がある。

国際交流基金は、国際文化交流を推進する日本で唯一の専門機関である。1972年設立以来、海外における日本語教育支援事業を行ってきた。設立当初は日本研究者養成が中心だったが、近年では、その時々の現地の要望や多様な日本語学習動機(先進技術獲得、技能研修、ポップカルチャー人気など)に応じた支援事業を展開している。しかしそこから読み取れるのは、相手国が日本語に興味を持ってくれているので、相手国の現状や要望に応じてお手伝いをするといった受動的・消極的な姿勢であり、それ以上の戦略的視点がない。

日本語教育学会や某大学・某日本語学校の日本語教育の目的や理念を見ても、「多文化共生のため/ともに学び合うため/相互理解・相互尊重のため/国際交流のため」といった言葉が躍る。確かに、最終的には日本の国益にも寄与するのかもしれないが、あまりに迂遠であり、戦略がないのに等しい。

 2020年に公布・施行された「日本語教育の推進に関する法律」も同じことがいえる。基本理念(第三条)には「日本語教育の推進は、日本語教育を受けることを希望する外国人等に対し、その希望、置かれている状況及び能力に応じた日本語教育を受ける機会が最大限に確保されるよう行われなければならない」「日本語教育の推進は、海外における日本語教育を通じて我が国に対する諸外国の理解と関心を深め、諸外国との交流を促進するとともに、諸外国との友好関係の維持及び発展に寄与することとなるよう行われなければならない」と書かれている。いちおう無難な規定であるが、我が国の国益に適う親日家・知日家を積極的に育成するという戦略的な視点は極めて薄い。

3 理念の欠如から生じた弊害

 我が国は、少子高齢化対策及び労働力不足対策として、1990年代から現在まで、「入管法」改正、外国人技能実習制度、留学生30万人計画、EPA、「特定技能」と、次々に新しい施策を繰り出してきた。しかし実態は日本人労働者が働かない低賃金労働の補充であり、これは一見、日本の経済を支えているように見られるが、日本の労働賃金を低下させる原因になっており、日本の経済を不健全にしていると評価すべきである。これも日本語教育の理念の欠如のもとに安易に経済の問題に対応したからだと思われる。

さらに留学生及び年少者の教育の問題だが、この2022年8月29日、岸田文雄首相は永岡桂子文部科学相と会談し、留学生受け入れ30万人を見直し、さらに留学生を増やす新たな計画を策定するよう指示した。留学生及び年少者の教育に関する問題は多々あるが、ここでは2点、理念の欠如から生じた弊害として簡単に触れる。

①年少者の教育問題

 1990年代から急増した日系2世・3世は渡日の際、家族を帯同する事例が多くなった。近年は留学生や特別技能でも家族帯同が認められている。学齢期となった子供は日本の公立学校に入学するも、日本語ができないために授業を理解できないだけでなく、母語も日本語も十分な能力を獲得できない。挙句の果ては不就学児となったり非行に走る事例も少なくない。

一方、受け入れ側の学校の教師たちに課される過重な負担も見逃せない。対象児童のための特別授業(日本語の補習授業等)、教材開発(ルビを振る、英訳をつける、母語の要約をつける等)、試験の特別対応(ルビを振る、辞書持込を認める、時間を延長する、試験問題を減らす、得点の底上げをする等)などである。また、親の仕事の都合による、不定期の入学・転学にも対応しなければならない。さらにまた、文化的違いに対する特別措置が、日本人児童との公平性に鑑みどこまで許容されるべきかも問題となる(ピアス、給食、放課後の掃除、課外授業への参加等)。「多様性は豊かさだ」という美名の下、問題を糊塗しているのが実態である。

②留学生の質の問題

 留学生10万人計画・留学生30万人計画では、数値目標だけが独り歩きし、各大学は無理をしても一定の人数の留学生を確保しようとする。

その結果、第一に、留学生の出身国が偏る問題がある。留学生の出身国の40%は中国である。その結果、機密情報流出の危険さえ生じていることである。しかし、日本の大学の危機感は非常に低く、性善説に立ち、留学生に疑いの目を向けることさえ忌避するような風潮がある。これも日本国全体で、日本語教育における戦略的視点の欠如の結果である。

第二に、学力・日本語力の低い留学生を受け入れざるを得ない問題がある。もともと学業目的でない留学生の場合は授業に出席せずバイトに専念したり、いつの間にか行方をくらます者もいる。そして大学の中には「大学の国際化」と称して、日本語力の低い留学生に対しては、日本への留学生に対する教育でありながら、英語で受けられる科目を増やしたり、英語だけでも卒業できることを謳う大学もある。

4 日本語教育に国家的戦略の視点を

中国の孔子学院は、中国語・中国文化教育機関である。教育の名を借りて中国共産党の主張に基づいた世論戦宣伝(プロパガンダ)やスパイ活動を行うと言われている。近年欧米では孔子学院への警戒が強まり、閉鎖する大学も相次いでいる。しかしこの孔子学院の自国語・自国文化を広めようとする積極的姿勢には、日本の国家的戦略として見習うべき点があろう。相手国の要望に応じただけの日本語教育、就職など個人的利益のためだけの日本語教育ではなく、日本という国の歴史・文化・価値観を深く理解する知日家、日本の伝統・文化を愛し尊ぶ親日家を養成するためには、孔子学院から学ぶべきものは多い。

そこで考えられるのだが、世界の国のいろいろな大学に、日本の予算を提供して、日本語と日本の文化を学ぶ「日本文化コース」というような授業コースを設け、必要に応じて日本の大学や専門学校から教授要員を派遣するような制度を創設すべきではないだろうか。

そのためには、日本国内における日本語教師養成において、日本語教師になることの意味を十分に理解させること、つまり、日本の国益のための日本語教育であり、日本語教師であるという使命感を持たせる必要があろう。また、自虐史観から脱却したうえで、最低限の素養として日本に関する知識を涵養するべきである。例えば、万世一系の天皇を頂く世界最長の歴史を持つこと、縄文時代という1万年以上にわたり平和な循環型社会を実現させていたこと、宗教に対する寛容さ、憲法17条に顕現する和の精神や民主主義、『万葉集』に見られる平等性、『源氏物語』に象徴される女性の地位の高さ、など、世界に誇るべきものは枚挙にいとまがない。こうしたことを、先ずは日本語教師自身が素養として持つべきものとして、こうした内容を大学や専門学校の日本語教師養成教育のカリキュラムに不可欠なものとして取り入れていくべきである。

これはあくまでも論者の一二三の印象であるが、日本語教師を目指す人は、優秀かつボランティア精神旺盛で、多文化共生や相互尊重といった高い志を持つ人が多い。したがって、国家的戦略を持って日本語教育の内容が改善されれば、使命感をもって日本語・日本文化を世界に発信し、知日家・親日家を増やすことはそれほど困難なことではないのである。