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国際歴史論戦研究所を中心とした国連活動の10年を通して何が変わったか

【英語版】https://i-rich.org/?p=2059

国際歴史論戦研究所 上席研究員 藤木俊一

「慰安婦の真実国民運動」の誕生

 2013年7月29日に「慰安婦の真実国民運動」という団体が結成された。

 筆者は、その以前から慰安婦問題に関して様々な活動を行ってきていたために、この団体が結成されたことは知っていたが、「なぜ、既にいくつもの団体が存在するのに新たに作るのか?」と懐疑的な見方であった。

 それは筆者が米国テキサス州に住むトニー・マラーノ氏(通称テキサス親父)と共に、米国カリフォルニア州グレンデール市において予定されていた慰安婦像(平和の少女像)の建立を阻止すべく、その根拠となる米国の公文書を確認しにアメリカ国立公文書記録管理局(NARA)へ泊まり込みで調査に出かけていた頃であった。

 調査を終えた帰国後の2013年9月に同運動体の佐藤和夫幹事より筆者に連絡があり、この運動体に参加して欲しいとの事であった。佐藤氏は、慰安婦問題のパネル展を行っている団体や、調査などを行っている団体らが、現在、個別に動いているために無駄があり、その力を集中させる団体で、月に1回の会合と主にメーリングリストを中心とした情報共有のための窓口であるとの説明を受けた。

 情報共有であれば、個々の団体の力以上の活動ができるであろうとの考えから、テキサス親父日本事務局として、また、個人的には幹事としてこの運動体に参加することを承諾した。

「iRICH国際歴史論戦研究所」の誕生

 慰安婦の真実国民運動は、創立以降、様々な成果を上げていったのは言うまでもないが、参加してまもなくの会合の場で、慰安婦は国連で性奴隷と言い換えられ、世界に喧伝されていったという経緯があるため、その国連で詳細を調査するために「慰安婦の真実国民運動・国連調査団」というものを結成する事となり、筆者もそのメンバーの1人としてこの調査団に加わり、2014年7月に国連の女子差別撤廃委員会に参加した。

 驚いたことに、国連内で話されていた事は、慰安婦問題のみならず、当時は日本国内ではほとんど話題にすら出ていなかったLGBT問題、同性カップルの公営住宅の入居に関する問題をはじめ、同性婚問題、沖縄問題、アイヌ問題、部落問題、朝鮮学校問題、極めつけは日本の皇室が女性差別であるとまで日本弁護士連合会NGOを始めとする左派の数々のNGOが国連に持ち込んで日本の事を良く知らない国連の委員達を洗脳しているのを目の当たりにした。

 また、日本弁護士連合会NGOのトップで、福島瑞穂参議院議員の事実婚の夫である海渡雄一氏が、100人を超えるであろうと左派NGOのツアーコンダクター役を担って国連内の言論空間を歪んだ言説で自由自在に操っていることを知る事となった。

 筆者は、慰安婦問題もさることながら、これらの問題が秘密裏に国連に持ち込まれ、日本の法律がこれらの勢力によって多く変えられている事を知り驚愕した。彼らは、今から約40年程前より国連で活動を開始して、日本国内外で弱者ビジネス、日本が如何に酷い国であるかを宣伝していたのである。

 筆者は国連から帰国した直後の月一の会合において、これらの状況を説明し、「慰安婦」という冠が団体名に付いていては、これら慰安婦問題以外の問題を扱う必要が出てきた今、名前が今後の活動にそぐわないので、この運動体の中に「国際委員会」という部署を創立し、これらの問題の対処にあたりたいと提案をし、認められた。

 その後に、この国際委員会は2017年11月にiRICH国際歴史論戦研究所となり、更に2022年4月に一般社団法人となったのである。

活動開始から10年

 最初に国連に行った2014年から今年で丸10年を迎える。その間、毎年、3回から5回、スイス・ジュネーブにある国連欧州本部で行われる人権関連のほとんどの会合に出席してきた。また、ニューヨークの国連本部での会合にも参加してきた。

 セッションごとにチームを組織し参加することや、筆者単独で参加することもあった。 コロナ禍において国連で会合がある時には必ず参加し、PCRテストを受けながら行き来していた。

 この間、慰安婦問題では、筆者も含め、杉田水脈衆議院議員(当時は落選中)や、なでしこアクションの山本優美子氏(当研究所所長)、藤岡信勝氏(当研究所上席研究員)、松木國俊氏(当研究所上席研究員)、トニー・マラーノ氏(テキサス親父)その他が対応にあたった。

 拉致問題と慰安婦問題では、藤井実彦氏(論破プロジェクト)も複数回に渡り国連での活動を行い、沖縄問題では日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚代表(当研究所上席研究員)や我那覇真子氏、アイヌ問題では澤田健一氏(当研究所上席研究員)、小野寺秀氏(元北海道道議会議員)、徴用工問題と慰安婦問題では、韓国の日本研究者である李宇衍博士(落成台経済研究所研究員)、中国による香港への圧力に関しては、香港や日本の香港人の活動家などを招聘したりと、日本を民間人として守るための活動に専念してきた。        

当初数年間は篤志家からの大口の資金援助などもあったが、その後は、自己資金と一部の心ある個人の支援者のお陰で参加を続けてきている。

 国連での継続的な活動が必要な理由は様々あるのだが、大きな一つの理由としては、左派の国連での工作をいち早くキャッチし、その場で彼らの主張に対して反駁し、国連からの勧告の発出を押さえ込み、また、日本国内にこれらの工作をいち早く伝えて対策を講じるためである。

 その他にも国連内での日本の保守派NGOの地位の確立も挙げられる。

 国連に通う左派の団結はかなり強い。しかし、10年間通ってみると、左派の中にも2種類の目的があることに気がついた。

 1つめは、単に国連から勧告を引き出し、日本の法律を何らか変えることができたと主張することを主目的とした単に個人や団体の名前を売りたい勢力と、2つめは国内外から資金提供を受け、または、日本国の予算や団体の予算を流用させ、日本の国体破壊を目論む勢力に分けられることがわかった。

 端的な例として、1つめは、弁護士という立場で「小学校の運動会での組体操は児童虐待である」などと国連に持ち込んだヒューマンライツ・ナウの伊藤和子弁護士らである。 これに関して筆者は、「明治時代から子供の心身鍛練を目的として継続してきたもので、児童虐待には当たらない」「当然、教員らも細心の注意を払い危険と判断すれば、段数を減らすなどしている」「怪我することを危惧していると言うのであれば、子供を自転車に乗せるのを止めた方が遙かに怪我の確率は低い」などと反論した。彼女の主張は、それくらいにおかしな話である。当然、国連からの勧告は出されなかった。しかし、もし、勧告が出され、法改正などが行われていたとすれば、この伊藤弁護士は、新たな判例を作った弁護士以上に弁護士として箔がついたであろう。この国連でのやりとりの中で、彼らは日本の某マスコミと結託して行っていることも突き止めた。

 2つめは、皇室典範を問題視する勢力や、沖縄の基地反対派達である。

 沖縄の活動家である山城博治氏が国連に来た際も、筆者はその場で反論を行い、国連からの勧告が出ることを阻止した。

 2017年6月18日の産経新聞の記事には以下の様に書かれている。

<引用> 

 ~ 前略 ~

 『山城被告は人権理事会関連のイベントでも、約50人のメディアやNGO関係者らを前に「私たちへの不当な処遇は政府の圧政にあらがう県民への見せしめ、恫喝であったことは言うまでもない」とアピールした。』

 ~ 中略 ~

『ところが、山城被告らが防衛省沖縄防衛局の職員に暴力を振るう場面の動画に関する質問が飛び出すと、山城被告は「私は日本一のテロリストのように喧伝されている」とはぐらかした。「加害者」だったことが暴露され、居心地の悪い思いをしたようだ。国連を利用して日本人が発信する嘘が封じ込められた瞬間だった。』

<引用終わり>

 昨年10月にも、玉城デニー沖縄県知事が日本の左派NGOである市民外交センターに県民の税金を使いサポートを依頼し、人権理事会で発言を行ったが、単独で国連の会議に参加していた筆者が、その場で知事の嘘や欺瞞を暴露した。当然、勧告などの発出には至っていない。

 このような活動を国連で40年間も左派勢力は続けてきていたのである。

 筆者が国連に通い始めて以降は、ある時はこちらもグループで、またある時は単独で、国連にこれら左派が持ち込む問題を国連内で反駁し、勧告を阻止するという活動を続けてきた。継続していなければ理解できないことだらけであった。

 国連傘下のユネスコの「世界の記憶」に韓国が慰安婦問題に関する1944年に書かれた米軍の公文書を登録しようとしたことがあった。これに対し、山本所長らが同じ公文書を別な解釈で登録申請するという戦略を考案し実行した。また、安倍総理率いる日本政府もユネスコへの拠出金を停止し、ユネスコ改革を提案し実現した。これは、国連やその傘下の機関は、あくまでもプラットフォームを提供する機関であり、歴史問題でどちらが正しいかを判断する機関ではないからである。

 このように様々な活動が、朝日新聞の慰安婦問題の誤報に関する訂正と謝罪を引き出したと言っても過言ではないと考える。

 現在の国連人権理事会での左派の活動の鈍化

 当初は、1つの会合に参加する費用は1人あたり35万円~40万円程度であったが、現在の円安の状況において、物価が最も高くインフレであるスイスでの活動は非常に費用がかかる。現在では1人あたり80万円~100万円程度かかるのである。左派はこうした資金を潤沢にもっているが、我々正統派は原則として手弁当で活動している。そしてそれに篤志家の支援や一般の人の寄付によって支えられているという形である。よって、我々は、効果がない活動はできない。左派が国連に持ち込む様々な嘘や歪曲されたデータを元に何も知らない国連の委員達をいいように誘導し、洗脳し、騙して、様々な勧告を自由自在に出させてきた左派であるが、それは左派の潤沢な資金に支えられてきているのだ。

だが、我々の10年間の活動の成果か、費用対効果が以前のように見込めないと考えているのか、新型コロナウイルスのパンデミック以降、左派の国連での活動がかなり鈍化してきている様である。

 国連において慰安婦を性奴隷と言い換えることに成功した戸塚悦郎弁護士(当時)の弟子を自称し、最後まで人権理事会に参加してありもしない慰安婦の捏造を継続していた元東京造形大学の前田朗教授(現同大学名誉教授であり朝鮮大学校の講師)も、ここのところ、人権理事会には参加していない。

 国連には人権理事会の他、4年か5年に一度行われるUPRの対日審査(普遍的・定期的審査)や各条約体委員会などがある。  人権理事会での彼らの動きはほとんど見られなくなってきているので、確かに左派は退潮しているといえると思うが、UPRや各条約体委員会などに集中する可能性もあるので、今後も、監視の目を緩めることなく対応をする必要があると考える。