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中国の情報戦強化(インターネット戦略)における「南京事件」

国際歴史論戦研究所
研究員 野々田峰寛

2024年12月13日、在日中国大使館は、Xに次の文を投稿した。「1937年12月13日、残忍な南京大虐殺が起きました。今日は、南京大虐殺犠牲者国家追悼日です。歴史を銘記し、平和を大切にし、共に犠牲者の冥福を祈りましょう。」

 1937年のその日、南京戦はあったが「南京事件」ましてや「大虐殺」など起きていないことは、当研究所が発信してきた池田研究員、阿羅顧問の各論説の通りである。

 筆者は2024年のこの日にX上で投稿を発見し、研究所関係者と相談の上、抗議文を国際歴史論戦研究所および南京の真実国民運動の連名で中国大使館へ発信した。この抗議文は中国大使館に届いていることは確認しているが大使館からの応答は一切ない。

 筆者はこの投稿の意図を探るため、投稿が国際歴史論戦の一つとして「南京大虐殺」を世界にどの程度発信しているか調査した。その結果、いくつかの国の中国大使館のX投稿を確認したが、同趣旨の投稿は見られなかった。また、2024年以前から継続的に投稿されているのかどうかを疑い、在日中国大使館の過去の投稿を振り返ったが、このような投稿は2024年に突如として始まったことを確認した。

 前年の経緯を踏まえて、2025年12月13日の動向を注視していたところ、在日中国大使館は、去年同様に「南京大虐殺」を記念する日とした投稿を繰り返した。しかも、2025年は、「極東国際軍事裁判の南京法廷で谷寿夫に対して有罪判決を下し、1947年に銃殺刑に処された」と、裁判上認められた「事実」であるかのような投稿だった。極東国際軍事裁判の問題点については我国のみならず海外においても戦後、縷々論じられてきたところであるが、谷の例においても、裁判の際、弁護側から「罪を論ずる根拠となすには不十分」と弁明されていることが、「虐殺派」の学者の一人である井上久士がまとめた『南京事件資料集 2中国関係資料編』にも記載されている。

 また、2025年の場合は前年と違う傾向があった。筆者が2024年に行ったようにいくつかの国の中国大使館のXについて調査をしたところ、”We never forget 300000”というキャッチフレーズで、在フランス、ドイツ、アメリカ各大使館、さらにイギリス駐在の中国大使個人もXに投稿していた。そしてその投稿を駐英中国大使館が引用した。各国へ拡散するような投稿は2025年が初めてである。

 当研究所澤田上席研究員は南京虐殺記念館を、中国人の残虐性のミラーイメージで日本を語っていることを指摘した。筆者は同種のことが情報、メディア空間においても展開されていると考えている。しかもそれらは偶発的ではなく計画的に実行されるのだ。

中国が情報に対して検閲を行っているのは周知のことである。筆者が2014年に香港、上海などに出張した時、CNNのドキュメンタリーのCMで中国当局が記者を拘束するシーンを香港で観たことがある。同じCMが上海でも放送されたが、記者を拘束するシーンはその瞬間だけテレビの映像がオフになった。筆者はそのとき検閲が行われていることを確信した。

インターネットにおいても検閲は行われている。金盾(グレートファイアウォール)と呼ばれるシステムが、国外の情報を遮断し、中国国内に中国政府にとって不都合な情報が流入することを阻止している。2014年当時もYouTube、Facebookなどのネットメディアには通常の方法で接続することはできなかった。

 インターネット空間における中国の情報戦は、2016年に習近平体制になって変化がみられる。従来の情報遮断に加えて、公式・非公式に中国に有利な情報を積極的に発信するよう変化した。この方針は次第に国内にとどまらず、海外に向けても行われるようになった。この情報発信戦略の中心にいると考えられるのが2011年に設立された中国サイバースペース管理局(Cyberspace Administration of China:CAC)である。Colville によると、CACは2024年3月に中国にとって有利な情報(Positive Propaganda)を流すよう指示を出している。2024年は、在日中国大使館が「南京大虐殺」プロパガンダを始めた年と一致しているのは偶然ではないであろう。

 また、無視できないのは、2025年は彼らが言うところの「極右政権」である高市政権が誕生したことで度々繰り返される中国外交部の日本語による挑発的発言だ。先に述べた「南京大虐殺」を投稿した諸外国の中国大使館が存在する国は、いずれもナショナリスト政党が成長している傾向が見られる。中国共産党は対外的にも日本「右派」政権を貶める発言をこれらの国でも展開することで各国のナショナリズム言論に対する牽制をしているのではないかと考えられる。

 そのような状況の中で、我が国の場合は、我々は、「南京事件」というプロパガンダと戦う局面において特に不利に立たされていると言ってよいだろう。最大の大きな原因の一つは外務省のホームページに「日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。」と書かれており、国会答弁においても政府見解となっていることにほかならない。当研究所阿羅顧問が述べているとおり、この政府見解を見直し、撤回することが必要である。インターネットにおける世論形成において、歴史学者と名乗る者が軒並み「虐殺」の定義をしないままに「虐殺」を肯定し、政府見解までもが「否定できない」とする中では「南京大虐殺」は事実でなくても「あった」ということにされてしまうのは必定である。

 我々は中国がこのような状況を見透かしながら、着々と情報戦を強化してくると覚悟しなければならない。その中国が強化してくるプロパガンダを跳ね除けるためには、日本国自身が歴史の真実に基づくことを宣し、その歴史の真実を基に積極的に情報戦に関与していくことを最初の一歩にしなければならない。民間で戦うことは容易なことではなく明らかに限界があるのだ。中国の宣伝戦の前に日本政府が最初から白旗を掲げるのは、国益を顧みない行為であり、現在のみならず過去の日本国及び日本国民に対する言われなき侮辱である。世界のためにもなっていない。

参考文献

  1. 澤田健一, “日本人らしさ”のルーツと和解, 国際歴史論戦研究所論説, 2026年2月
  2. 池田悠, 日本の言論空間と南京事件, 国際歴史論戦研究所論説, 2025年8月
  3. 阿羅健一, 戦後80年の南京プロパガンダ, 国際歴史論戦研究所論説, 2025年10月
  4. Cyberspace Administration of China, http://www.cac.gov.cn/ (中文)
  5. Colville, Alex (2025-04-21). "Bringing AI Down to Earth"China Media Project. Retrieved 2025-04-23.