令和5年3月15日
2023年3月6日韓国の朴振外相は徴用工問題の解決策として、韓国政府傘下の財団が日本企業の賠償金を「肩代わり」する案を発表した。韓国側が日本企業に直接賠償を求めていないこと、及び謝罪を重ねて要求していないこと等を評価し、日本政府は本案を前向きに受け入れる意向を示している。岸田首相及び林外相は「日韓関係を健全な関係に戻すもの」として「肩代わり」案を歓迎し、その上で岸田首相は韓国側に配慮して「歴代内閣の日韓関係に関する歴史認識を引き継ぐ」と公言した。さらに林外相は「政府として民間企業による国内外での自発的寄付活動について特段の立場をとらない」と発言している。
このような一連の日本政府の対応は、法論理的に考えれば、我が国の将来に重大な禍根を残す恐れのある極めて不適切なものであると言わざるを得ない。
徴用工問題を巡って日本で行われた裁判では最高裁判所が被告企業の無罪を確定している。だがここで補償金の「肩代わり支払い」を評価し受け入れれば、日本政府が韓国の最高裁判所による有罪を認めたことになる。それは日本の最高裁判所の無罪判決よりも韓国最高裁判所の有罪判決を優先することを意味し、日本の主権放棄に繋がる。
さらに同有罪判決は「日本統治は不法な植民地支配であり、従って統治下での日本企業の活動も不法である」という認識に基づいている。「肩代わり」案を日本が承認すれば、被告の通常の企業活動を有罪だと認めることになり、「合法的な統治」であったとする日本の立場が根本から崩れる恐れがある。
また、政府が「日本企業の自発的寄付活動に特段の立場をとらない」とだけあるのであれば、それは日本政府が当該企業に暗に寄付を促しているに等しいとも解釈できなくはない。
もし当該企業が寄付をするようなことが起これば、それは過去の「強制労働」への償いとなり、日本企業が朝鮮人を「強制労働」させたことの証左となる。
ここで日本政府が正しく対応しなければ、韓国最高裁の「日本統治は不法な植民地支配」という認識が定着し、日本統治時代で日本が行ったあらゆる行為が訴訟の対象となり、法論理上、朝鮮総督府が徴収した税金も日本企業が上げた利益も全て「不法な搾取」となり、膨大な額の対日訴訟が発生する可能性がある。
しかしながら「日本の朝鮮半島統治」はあくまでも日本国と大韓帝国の正式な国際条約によって合法的に両国が統合したものであり「不法な植民地支配」ではない。それは今日に至るまで日本政府が戦後一貫して取って来た正当な立場であり、我が国として絶対に譲ってはならない一線である。
両国の請求権については1965年に両国政府が締結した「日韓請求権・経済協力協定」によって「完全かつ最終的」に解決しており、国家間の合意は三権(立法・司法・行政)を超越して 国家を拘束するものであり、『条約法に関するウィーン条約』にもそのことが明記されている。韓国最高裁の判決は本来この協定を反故にするもので国際法違反であり、国家の統治行為の最終責任者としての大統領が自らの責任において廃棄すべきものである。しかも原告4人の中で徴用によって当該企業で働いたものは一人もおらず、「事実誤認」の不当判決でもある。
以上の通り非は全て韓国側にあり、日本が徴用工問題を巡って日本の首相が「謝罪を引き継ぐこと」を表明すべき筋合いはない。ここで韓国に迎合して不必要な謝罪或いはそれに準じる発言をすれば、これから先も事あるごとに日本は「反省の意」を表明することを求められることになるであろう。
日韓両国が将来に向かって対等で健全な関係を回復し、信頼に基づく友好国関係を築くために、さらにはアジアの安全保障と経済繁栄に寄与するために、我々は下記の4点を日本政府に強く要望する。
1.尹錫悦大統領に対し、国家の統治行為の最終責任者であり、国家を最終的に代表する者として、韓国最高裁判決が国際法に違反していることを認め、大統領の責任において韓国内で解決すべき問題であることを正式に表明するよう、日本政府は尹錫悦大統領に求めなければならない。そうしなければ今回の尹大統領の決定すらも将来の大統領によって覆される恐れが出てくる。
2.韓国の案が日本企業の「肩代わり」である以上、日本への求償権は残る。日本政府は徴用工問題は韓国の国内問題であり、今回の解決策は「肩代わり」ではなく、韓国内で完結する解決策であるとの確認を韓国政府より取り付けなければならない。
3.終戦時に現在の韓国に残した日本の民間資産は現在の価値で7兆円に近い。これらは本来日本側に所有権があるが「日韓請求権・経済協力協定」で日本は放棄している。「日韓基本条約」及び「日韓請求権・経済協力協定」で請求権問題を含め、過去は全て清算済であることを、日本政府は韓国政府に再確認させるべきである。
4.これまで日本政府が「河野談話」「村山談話」「菅談話」などで韓国の歪曲した歴史をそのまま受け入れ謝罪を繰り返したことで、嘘が「真実」となり今日の日韓の対立を招いた。日韓和解のために日本政府は「歴代内閣の歴史認識」を踏襲すべきではなく、逆に歴史の真実に基づいてこれを見直し、日韓併合が「不法な植民地支配であった」との韓国人の誤解を解いて、日本人の名誉と誇りを取り戻さねばならない。
以上
国際歴史論戦研究所
会長 杉原誠四郎