2024年4月
国際歴史論戦研究所 ゲスト・フェロー 宮本富士子
【英語版】https://i-rich.org/?p=1971
韓国語と日本語の近似性
韓国語の勉強をし始めた当時、「韓国語と日本語は文法から言葉の発音までなぜこんなに類似しているのだろうかと不思議に思った。
私が日本人であって日本の教育を受け、日本文化のなかで生きてきた土台のうえで韓国語、つまりいわゆるハングル語を学ぶということは、ある意味で漢字を自然に学び習得した基盤があるので容易であったのではないかと思っている。というのも韓国には日本の熟語漢字の単語がほぼ残っていて、それが現在は表音文字のハングルに置き換えられているのであるが、ハングルの発音の規則を覚えると直ぐ頭のなかで漢字の熟語に置き換えられる。
漢字は中国で作られ朝鮮半島を通して仏教伝来とともに日本に伝えられたとして、韓国人は「漢字は私たちが日本に教えてやった」という観念を一般的に持っているが、明治の時代、日本人が、英語から多くの場合二字熟語として作ったものが、逆に36年間の日韓併合時代を通して朝鮮半島に、そのまま伝わり定着しているのだ。
例えば「学校(학교)」「社会(사회)」「薬局(약국)」「経済(경제)」「計画(계획)」「野球(야구)」ほとんどが日本人が作った言葉だが、そのことを韓国人もほとんど知らない。
現在の韓国語表記における漢字使用の廃止
が、この漢字表記が現在の韓国語の表記で問題になっているのだ。現在の韓国語では、漢字によってできた単語を全てハングル表記でし、漢字表記はしないのだ。そのことについての不便さを感じたのは私が私の子供たちの学校の教科書を見た時だ。ハングルは表音文字なので日本式に言えば全てひらがなで書かれているということになる。
ハングルでの表記は発音においては英語を初めとする外国語のほとんどの発音が可能と言われるように非常に優れている点があるが、同音異義語の場合、日本人は漢字を見てその意味を把握できるが、ハングルでは漢字表記がないために前後の文章を見て、その関係で元の漢字で表記していたときの意味を把握しなければならない。
極端な例をあげると「防火」も「放火」も同じ表記の‘방화’なのだ。また日本語の前期、前記、電気、伝記、電機、全期、戦機、戦旗もハングルでは‘전기’という一つの表記で表わすことになる。英語等では、文字は表音文字でも、各単語には、接頭辞や接尾辞、語幹があり表意文字の面もあります。ハングルには音の羅列しかなく表意文字の構造がありません。各単語の概念が聞いてすぐに把握できず、不自然なのだ。
このようにハングルだけだと韓国人は単語の意味をどれだけ正確に深く脳にインプットし、その意味を熟知したうえで使っているのか疑問を感じざるをえない。
例えば医学用語で日本語に「耳鼻咽喉科」という言葉があるが、韓国語ではその単語をハングルで、「이비인후과」と書くが、日本人は漢字を見てその部分が即座に理解できるのに、韓国人の場合は、「이」、「비」、「인」、「후」がそれぞれ何を意味しているのか知っているのだろうかと疑問に思われるのである。
漢字を使用しないことからくる教育上の問題
上記したように息子の中学校の歴史教科書見ると地名なのか人名なのか、それとも別の言葉の単語なのか、子供たちがこれをどこまで正確に理解できているのかと疑問に感じたことを覚えている。中学校の時に漢字だけの時間があるが、漢字の授業は漢字だけを学習し、その他の科目の教科書のなかに漢字は全く組み込まれてないので、その漢字の勉強がどこまで子供たちの脳裏に浸透しているかは全く疑問である。
日本語の個人レッスンで韓国の50代60代の会社の代表取締役の人に日本語を教えたことがあるが、その人が若いころはまだまだ漢字が新聞のなかにあったので日本語の勉強の時にそれが役に立つと言っていた。しかし今では全ての新聞そしてテレビ番組の中での字幕やインターネット上も漢字は全く使用されておらず、そのことは子供にとっても、学校の教科の学習でも問題になると思われる。
私は現在、個人的に韓国での市民活動をユーチューブで配信している。動画作成のとき、日本語字幕をつける際に地名、大学名等の固有名詞では漢字で表すことが必須であるが、漢字を正しく確認するため韓国のネットで検索しても全く漢字が表記されておらず、ほとほと困ったことがある。ありがたいことに日本のヤフーで検索すると地名や固有名詞がしっかり漢字で明記されているので本当に助かった。
漢字表記の無いことによる思考上の問題
韓国人は元来、理性よりも感情が先に立っている国民性だと言われているが、理性的な対話が成立してこなかったこれまでの日韓の外交関係にも漢字文化の削除が大きく影響しているのではないかと思われる。
日本統治時代に朝鮮半島でソウル大学を卒業した韓国の80代と思われる高齢者たちと戦時ジャーナリストの井上和彦氏と対談した動画を見たことがあるが、その高齢者たちの日本語の流暢なことと尊敬語謙譲語そして語彙力に驚かされたことがある。在日韓国人や現在日本に留学している韓国人は日本文化のなかで漢字を学んでいるので韓国に住んでいる韓国人とは思考力、判断力において大きな差があると感じている。
もちろんハングルの優れた部分もあるので、現在の韓国人の、瞬発力や思考の早さ展開、推進力はとても早いものがあり、行動力も優れエネルギーを発揮する点は本当に感心させられ尊敬できる部分だ。
2019年12月にソウル日本大使館前の慰安婦像撤去の活動を始めたことをきっかけに、私もともに活動をするようになった国史教科書研究所所長で慰安婦法廃止国民行動の代表の金柄憲代表が、なぜここまで堂々とあの反日韓国で嘘を暴き、いかなる迫害のなかでもひるむことなく真実を訴えることができるのか。その行動の速さや分析力はどこからきているのか。それは金柄憲代表が大学で漢文学の専攻をし、漢字の専門家であり、漢字の持つ意味に忠実であることに起因しているからだと、私は思っている。思慮の深さと緻密さは他の韓国人とは比較にならないほど秀でているのだ。なので一般の韓国人は歪曲された歴史を鵜呑みにしやすいが、金代表は嘘や誤謬をすぐに見つけられるのである。
金代表には2014年から始めた国史教科書研究所で学校の教科書が間違いだらけということで、各出版会社に直接何度も電話をし、間違いを指摘し正してきた功績がある。
金柄憲所長曰く、特に韓国の近代史の日本に関する記述は99%が捏造歪曲だということだ。金柄憲所長率いる慰安婦法廃止国民行動の運動も今年で5年目を迎えるが、運動内での豊かな発想と実行力は韓国人という思考と行動の早さの基盤とともに、漢字を知り尽くした緻密な理論哲学と良心という道徳性とが合わさって形成されたものだと思っている。
漢字表記の復活を
ゆえにこの漢字文化を削除した韓国はもう一度漢字を学校教育を通し少しずつ復活させ、社会に普及していく必要があると思われる。
ちなみに言うが、韓国でハングル専用を実施したのは朴正煕政府の時代であった。
朴大統領は1968年5月内閣に1973年を目標としたハングル専用5ヶ年計画を樹立するように指示した。以降、朴大統領自身も文書の作成、名牌等も全てハングルに替えた。その年の10月には目標年度を1970年にし、3年前倒しにする等、7項目の強力なハングル専用の指示を出した。漢字の削除、ハングル専用政策の概念は「近代化の流れのなかで表意文字の漢字を前近代的なものとしてとらえ、自国の言語生活を通して漢字を打破するのが啓蒙の一環としてみられたということだ。漢字を一掃することが近代化」と考えたとは驚くべきことである。漢字を一掃したが故に、韓国は歴史のウソに気づくことができなくなってしまった。漢字表記の復活なしには日本と韓国との歴史的かつ国際的な問題の溝は狭まらないであろう。